
8/5
携帯電話のディスプレイに表示されている日付を見ると、小さく溜息をつき
携帯を閉じた。
テ-ブルの上に置いた 綺麗に包装された包みを見て、寂しさがこみ上げた。
『・・・・ゴメン・・・・・・。』
レ-スのカ-テンから差し込む陽射しが 今日も暑くなることを物語っていた。
『絶対行くからねって・・・約束したのになぁ・・・・・』
そっと呟いて こみ上げてきそうになる涙を拭うと
朝の支度にゆっくりと取りかかった。
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『あっれ~?おかしいな~』
取材の合間、楽屋でメ-ルチェックをしていた安岡は携帯のディスプレイを
見つめたまま、声を上げた。
『どうかしたんですか?』
気がつけば 鏡台にその優しい笑顔と姿が映っていた。
『・・・・センセ・・・・・』
『今日はヤスの誕生日でしょ?何かいい事でも・・・ありましたか?』
小さく笑いながら 椅子に腰を下ろす。
『・・・・その逆・・・・・』
携帯のディスプレイと北山を見つめながら、安岡はポツリと呟いた。
『逆?』
『玲愛から連絡がない・・・。』
小さく呟くと、安岡は子供のように 頬を膨らませた。
『・・・・玲愛ちゃんから?』
『・・・・・うん、ここ最近、連絡取れてなかったんだけど、1ヶ月前にメ-ルくれた時に
約束してくれたんだ。“8/5は東京に行くから だから一緒にお祝いしよう“ってさ・・・』
テ-ブルの上に置いてあった ライタ-を手の中で弄びながら
安岡はそっと俯いた。
『・・・そっか。でもさ、玲愛ちゃんにも玲愛ちゃんの生活がある訳だし、いろいろと忙しい
んじゃない?』
『それは分かってる・・・・分かってるんだ・・・・・』
短い 沈黙の後 安岡は小さく呟いた。
『・・・・・いつもはさ・・・・お互い離れてるから・・・・・・こういう日ぐらい一緒に居たいって・・・
玲愛と一緒に過ごしたいって・・・・そう思っちゃうんだよ・・・・・・・。“俺の誕生日なんだから
一緒にいてくれたっていいだろ?“って・・・・そう思う自分が・・・今ここに居るんだよ・・・・』
胸の真ん中で片手を強く握りしめ 安岡は小さく溜息をついた。
静かな部屋に
想いが 零れていく。
北山は腕時計で時間を確認すると
安岡に言った。
『ヤス、もう取材は終わった?』
『え・・・?・・・・一応・・・終わったけど・・・』
安岡の答えに 北山はそっと微笑むと言った。
『なら、話は早いね。』
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『ありがとうございました~』
仲良く店を出ていくカップルの姿を見送ると
玲愛はテ-ブルの上に置かれたままになっていた
料理皿をゆっくりとトレイに乗せ、片付け始めた。
『本当にお人好しなんだから!』
『え?』
振り返ると、バイト仲間である美穂が頬を膨らませて立っていた。
『“8/5は彼の誕生日だから、東京に行ってお祝いする”って言ってたくせに、
どうしてここにいるのよ!』
『だから・・・・梓が急な用事が入ったからって・・・・』
『梓?あの子は自分さえよければ誰だって利用するんだから、そんなの断ってやれば
良かったのよ!そもそもシフトの半分も出てないで、給料日間近になると出てくるんだから・・・。』
美穂は小さくひとつ溜息をつくと言った。
『・・・・彼には?ちゃんと連絡したの?』
『・・・・・・しようと思ったんだけど・・・・自分から言い出しといて、なんか『駄目になったから』って言うの・・・・決まり悪くて・・・・・・』
今にも泣き出しそうな 玲愛の顔を見つめながら
美穂が また続けて言った。
『・・・・待ってるんじゃない?彼・・・・』
『まだ30分あるわよ、“おめでとう”の一言でいいから言ってきなさいよ、きっと喜んでくれる
から・・・・・・』
『美穂・・・・・・』
『後はあたしが片付けておくから・・・・』
美穂のその言葉を聞くと、玲愛は携帯をバックの中から取りだした。
『美穂!』
『ん?』
『ありがとう!』
美穂の笑顔に見送られ、玲愛は慌てて店の外へと飛び出した。
腕時計で時間を確認すると11時半を少しばかり回ったところだった。
メモリ-から 最愛の その名前を呼び出そうとした次の瞬間
【着信・安岡優】
『う・・・・そ・・・・・・・』
誰よりも愛しい 彼からの 電話。
思いがけない偶然に驚きながらも、ゆっくりと通話ボタンを押し、
携帯を耳に押し当てる。
『もしもし?玲愛?』
何よりも愛しい その声に 思わず涙が溢れそうになる。
『・・・・・・・・・』
『俺だけど・・・聞こえてる?もしもし?』
頬に伝い落ちてきた 涙をゆっくりと拭いながら
玲愛は言った。
『聞こえてるよ、優。』
『玲愛?良かった~』
その声を聞くだけで その笑顔が思い浮かぶ。
『あのさ・・・・・・』
『ん?』
『俺、今どこから電話してると思う?』
『え・・・?マンションじゃないの?・・・あ・・・それともスタジオ?』
玲愛の答えに安岡はクスクスと笑いながら言った。
『残念でした~どっちもハズレ。』
『え~、じゃあどこにいるのよ?』
『・・・・・・・後ろ、振り返ってみて。』
『・・・・・え・・・・・?』
『・・・・・・来ちゃった・・・・・・』
玲愛が振り返ると そこには
誰よりも愛しい 安岡の姿があった。
頬を撫でる風のように 柔らかな笑顔を浮かべ そこに立っていた。
『・・・・・・・・・ここ・・・・・沖縄よ・・・・・・・?』
『・・・・・・・・うん・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・仕事は?』
『あったよ。あったけどさ・・・・・センセイが“自分にとって大切な日は大切な人と過ごすべきだよ”って言ってくれたから・・・・来ちゃった。』
『ま、本当は誰かさんが誕生日祝いしてくれるっていうから、すっごい楽しみにしてたのに
当日になったら、連絡1本もくれないし・・・・・・実はかなりショックだったりして・・玲愛が来てくれないから俺が来ちゃったじゃん。・・・・・』
『ごめん・・・・連絡しなきゃと思ってたんだけど・・・・・』
俯く 玲愛に安岡はクスクスと笑いながら 言った。
『じょ-だん。冗談だって、分かってるって。玲愛だっていろいろあるんだろうなって、ちゃんと分かってるからさ。でも・・・・・誕生日ぐらいは俺を優先してくれてもいいと思うんだけど?』
おどけたように 見つめてくる 安岡に
玲愛は小さく微笑み言った。
『ちゃんと、プレゼントは用意してます。』
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海の波音を聞きながら
安岡は玲愛から渡された小さな包みをゆっくりと解き始めた。
『やっぱプレゼントって何歳になっても嬉しいもんだよね、今 すっごいドキドキしてるもん(笑)』
『・・・・気に入ってくれればいいんだけど・・・・・』
『玲愛のくれるものならなんだって、嬉しいよ。』
柔らかな笑顔を浮かべ、安岡はそっと玲愛に笑顔を向けた。
やがて、小さな箱が現れ、安岡はゆっくりとその蓋を開けた。
『・・・・・・わぉ・・・・・・』
短い 静寂の後
安岡の手の平に 姿を現した物は
銀の腕時計と 万年筆だった。
『いろいろ考えたんだけど、これが一番いいかなって・・・・・。』
『腕時計はね、実はペアウォッチなの。・・・・・私も買っちゃった・・・・。』
そう言って、微笑む玲愛の細い腕には安岡の手の平にあるのと
腕時計が確かに時を刻んでいた。
『東京と沖縄・・・離れてはいるけど・・・・これをしてれば少しでも優を感じられるかなって
そう思って・・・・・・・・』
『ありがと・・・大切にするよ。』
そう言って微笑むと 安岡はゆっくりと腕時計をその腕にはめた。
『で、これは?』
手の平に置かれた万年筆を見つめ、ゆっくりと訊く。
『それは誕生日プレゼントなんだけど・・・お店で見て一目惚れしたの。ただ、何て言うか
このペンがあることで、優がもっと今まで以上に素敵な曲をかけたらな・・・ってそう思って願掛けみたいな感じで買ったの。』
『そっか・・・・何か俺、さっき“連絡くれないとか”、“会いに来てくれない“なんてワガママ言っちゃったけど・・・玲愛はこんなにも俺のこと思ってくれてたんだ・・・・これ以上何か言ったらバチが当たるよね(笑)ゴメン・・・・』
『ううん、ちゃんと連絡しなかった私も悪いから。』
気がつけば
あと5分で 安岡が生まれた 8/5が終わろうとしていた。
『優・・・・・』
『ん?』
『誕生日おめでとう。』
『・・・・ありがと。やっぱり玲愛から聴く、“おめでとう”が一番だね』
『そんなに喜んで貰えて光栄です(笑)』
『いえいえ(笑)あ・・・・・でもひとつ足りないなぁ・・・・・』
『ん?』
そっと顔を覗き込めば
その口唇がそっと触れて 波音と共に溶けていった。
『HAPPY BIRTHDAY 優・・・・・・・・・』
『ありがとう・・・・・・誰よりも何よりも玲愛が好きだよ・・・・・』
『・・・・・・・・愛してる・・・・・・・・・・・。』
fin
This day once in one year.
I come across you by sincere thanks in that I can celebrate this day when you were born with you and think happily by this life to be able to walk together. And it is ... HAPPY BIRTHDAY to you so that this one year is good for you