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『“声が聴きたかったから“かぁ・・・なるほど、黒ポンらしいね(笑)』 『もう~他人事だと思って~。』 週末の夜、私は彼の仲間の1人である陽一に、数日前の出来事を話した。 友達として、長年付き合ってきた彼からの突然の告白。 その出来事に 私は戸惑いを隠せず、またそれと自分の中に沸きあがってくる 想いにどう向き合えばいいか、迷っていた。 『でもさ、黒ポンが冗談で、そんなこと言うタイプじゃないっていうのは紫穂梨が一番 分かってるでしょ・・・・?』 優しい その声は 不思議と私の心を 落ち着かせていく。 『・・・・・・う・・・・ん・・・・・。でも・・・・・でも10年以上も友達として付き合ってきて、急にそんなこと言うのってなんていうか・・・・・・』 『フェアじゃない?』 彼の口から紡がれた一言に 私はそっと頷いた。 『・・・・・・うん・・・・・・。』 『じゃあ、紫穂梨は黒ポンのことどう思ってる?』 『え・・・・?』 『大切な友達?それともずっと傍にいて欲しい存在・・・・?』 『・・・・・・それは・・・・・・・・』 静かな沈黙が ゆっくりと流れていく やがて 陽一の優しげな声がそっと耳元に届いた。 『男って案外そういうところ、気にするからさ(笑)・・・・・・・・・・だからもし、黒ポンの気持ちに答えられないんだったら、期待持たせるようなことはしちゃ駄目だよ?最後に傷つくのは黒ポンだから・・・・・』 『陽一・・・・・・・・』 ******************************** ゆっくり深呼吸をして、受話器を手に取る。 既にインプットされているその番号をゆっくりと叩き、受話器を耳に押し当てる。 小さな接続音が聞こえ、私はそっと息を飲んだ・・・・・。 NEXT→ # by yuna-sos-0305 | 2006-07-30 21:04
「あ・・・・」 偶然見つけた1本のビデオテ-プ ビデオのラベルに視線を注げば 薄い文字で 【春妃】と書かれていた。 そして それは もうこの世には存在しない 彼女の姿を捉えた 確かなひとつの証だった。 *************** ビデオデッキにビデオテ-プをセットして ゆっくりと再生ボタンを押す。 やがて 視界に飛び込んできたのは 柔らかに 微笑む彼女の姿だった。 「・・・・春妃・・・・」 胸が高鳴り その仕草 ひとつ ひとつに息を飲む。 『すごく気持ちいいよ~。陽一もほらっ、来て』 そう言って ビデオカメラを回し続ける僕の手を引っ張る彼女。 『ちょっ・・・春妃・・・』 『もう~そういうとこ駄目だよね~陽一って。』 そう言って 溜め息を1つ ついてまた笑顔になる。 『・・・もっと柔軟になれって(笑)?』 『・・・わかってるならよろしい(笑)』 長いロングスカ-トの裾をそっと持ち上げて 水の中に足を浸したまま ゆっくりと 笑顔を向けて 彼女が囁く。 『陽一・・・?』 『ん~?』 『好きよ・・・・』 『・・・・僕も好きだよ・・・・』 『・・・愛してる・・・世界の誰よりも陽一のこと愛してる・・・』 『・・・・僕も・・・僕も春妃のこと愛してる・・・・』 そしてこれ以上ない程の 笑顔で微笑んだ君に 僕はどんな言葉をかけたのだろうか どんな表情を向けたのだろうか もう今となっては 知ることの出来ない その事実に 涙が零れ落ちる。 「・・・・・・・っつ・・・・・・・・」 「・・・・・・春妃・・・・・・・」 僕は君を幸せにしてあげられていたのだろうか? 僕といて君は幸せだったのだろうか? 君がいなくなった今は 疑問符だけが 浮かび上がる。 「・・・・・・・愛してる・・・・」 「世界の誰よりも・・・・春妃・・・君を・・・・愛してる・・・・・」 過去形でしか 君を思い出せない 僕を許して・・・ テレビの画面に映る 君の笑顔だけは 『春妃・・・・・・・・』 なにひとつ変わらないままで 君との想い出だけが 眩しく記憶に残り続ける。 君と過ごした日々が 『・・・・・春妃・・・・・・・・・・』 映画のワンシ-ンのように 僕の心に刻まれて 心を掴んで離さない。 『・・・・・・・っつ・・・・・・・・春妃っつ!!!!!』 誰よりも なによりも 君を愛している そして 僕たちは確かに愛し合ったのだと 改めて 認識する。 誰よりも何よりも 僕らは愛し合っていた。 これが 君の・・・・そして僕達2人の全て・・・・。 # by yuna-sos-0305 | 2006-06-21 21:33
なんだか眠れなくて ぼんやりと窓から月を眺めていたら ふとかかってきた1本の電話。 ****************** <着信・黒澤薫> 『・・・・・・はい・・・・・』 『ごめん・・・寝てた・・・・?』 少し心配そうな声。 彼の優しい心遣いが 電話越し そっと伝わってくる。 『・・・・・・ううん。大丈夫・・・・・』 『そう・・・・それなら良かった・・・あのさ、ちょっとだけ付き合ってくんない?』 『いいよ・・・・・・』 **************** 『でさ・・・・、村上のやつってば・・・・紫穂梨?』 気が付けば 時計の針は3時をとうに過ぎていた。 『ん・・・・・』 『ごめん。さすがに眠いよね・・・・?』 時間の経過に気づいたのか また優しい声で 気遣ってくれる。 『ん~ちょっと眠いけど・・・大丈夫。』 目を擦りながら、曖昧になっていた意識を覚醒させる。 『ねぇ・・・紫穂梨・・・・俺が電話した訳・・・分かんないでしょ?』 突然 疑問符を投げかけてきた彼に 笑いながら答える。 『話を聞いて欲しかったんでしょ?電話かけてきた時、言ってたじゃない(笑)』 『それはそうなんだけど・・・・・・』 『だけど・・・・・?』 彼の言葉を真似た その直後 その温かで 優しげな声で その一言が紡がれた。 『俺が電話したのは・・・・・』 『紫穂梨の声を聞きたかったから・・・だよ。』 それじゃあ、おやすみ、と その優しげな声で囁いて 彼からの電話はゆっくりと 途切れた。 止まる思考。 押し寄せる感情。 火照る体。 『俺が電話したのは紫穂梨の声を聞きたかったからだよ』 悔しいほどに 気が付けば その一言に どうにも動けずにいる自分が居た。 『もぅ・・・・薫のバカ・・・・・・・・・・』 そう小さくつぶやいて ふと見上げた夜空に浮かぶ月は これ以上なく 冷たいものに感じられた。 初夏の風が優しく頬を撫で、通り過ぎていった。 深夜3時。 恋に落ちた自分がそこには居た。 fin ![]() # by yuna-sos-0305 | 2006-06-19 20:46
![]() 黒沢の問いに酒井は深く息を吐きだすと言った。 『ああ・・・』 『本当に?』 『本当に・・・』 『・・・・・』 『でもさ、美咲ちゃんもいろいろと思うところがあったんじゃない?』 黒沢の言葉に酒井はゆっくりと顔を上げると、その端正な顔を見つめた。 『え・・・?』 『出逢ってから今まで5年間、長くて2週間。短くて3日。必ず入院してただろ? だから恋人としてお前に負担ばかりかけてきたから、つい強がり言っちゃったんじゃない?』 『・・・・・』 『・・・美咲ちゃん、モデルの仕事にかけてはプロだって言われるじゃない?それもさ、努力の賜物なんだよね。俺達や美咲ちゃんの仕事って1度に何十人もの人間が動く訳だから当然プロ意識だって高くなる・・・そんな仕事を美咲ちゃんは雄二に出逢うまでの5年間ずっと1人で続けてきたんだからさ・・・だから支えてあげなよ・・この5年間ずっと一緒だったろ?美咲ちゃんも酒井もお互いがお互いを必要としてるんだからさ・・・だからそんな小さな事でへこたれるなよ・・・・』 『黒ポン・・・・』 『俺は何があっても、どんな事があっても2人の味方だからさ』 そう言って 黒沢はそっと柔らかな笑顔を浮かべた。 ******************** 『最近、彼・・・来ないけど・・喧嘩でもした?』 『・・・・・』 『・・・な~んてそんなことある訳ないか(笑)』 『もう来ないと思います』 『え・・・・?』 『喧嘩しちゃったんです・・・私達。』 “貧乏くじ引いちゃったね・・・” “俺は美咲に出逢えて後悔した事なんてないよ” 『・・・・なんで・・・あんな事言っちゃったんだろ・・・・・』 美咲が涙を認識したその次の瞬間 『俺は美咲に出逢えて良かったよ』 『・・・・・どう・・・して・・・・・』 そこには穏やかな笑顔を浮かべた 酒井の姿があった。 酒井はゆっくりと美咲の元へ近づくと その瞳に浮かんでいた涙をそっと拭いながら言った。 『こんな状態のお前を1人放っておくなんて・・・出来るわけないだろ・・・?』 『・・・・・・・・雄二・・・・』 酒井は、美咲を優しく見つめながら 確かな声で言った。 『美咲・・・・・病院を退院できたら・・・・結婚しよう』 『雄二・・・・・』 『ずっと考えてたんだ・・・。でもなかなか言えなかった・・・。俺、こんなだし仕事の関係でお前の傍にいてやる事もなかなかできないし・・・何より、今回入院したのは俺のせいだって・・・思ってたから・・・・』 『雄二のせいって・・・・?』 酒井の言葉に 不思議そうな表情を浮かべながら、美咲は尋ねた。 『1ヶ月前デ-トした時に調子が良かったから、俺言っただろ?』 『え・・・?』 『・・・その・・・泊まるかって・・・・』 恥ずかしさを隠すように 呟く酒井を見つめながら 美咲は笑顔を浮かべながら言った。 『ありがと、心配してくれて・・。でもたぶんあの日の事が、今回倒れた原因じゃないから』 『と、言うと・・・・?』 『雄二あの日、すっごい緊張してて全然優しかったから(笑)』 『・・・・・・・』 『だから大丈夫。』 『雄二・・・・?』 『ん?なんだ?』 『ありがとう・・・・・』 そう言って、美咲はそっと酒井の胸に寄りかかった。 『ああ・・・・・・』 輝く夕日が2人を優しく包んでいた。 穏やかな時間が流れていた。 *************** 『ツ-ショット写真?』 『そ、ウワサの彼を公表するんだってさ(笑)』 『ま、いいんじゃない?晴れて婚約もした事だし』 安岡と北山から、酒井と美咲の状況を聞いた村上は そのままソファ-に腰を下ろすと、テ-ブルの上に置かれていた 雑誌に目を通し始めた。 『その代わり、マスコミとファンへの対応はリ-ダ-の仕事ですけどね』 『は?』 突然の言葉に顔を上げると、案の定、北山と安岡が楽しげな表情でこちらを 見つめていた。 『・・・・・・・なんで俺な訳?』 その一言に すかさず答えたのは安岡だった。 『だって、リ-ダ-じゃん』 『当然の権利ですよね』答えるように北山が笑顔を浮かべ言い放つ。 『そんな権利いらねぇよ・・・・・』 安岡と北山に反発する訳でもなく、村上は1人呟くと 再び雑誌へと視線を戻していった。 ************** 『綺麗・・・・真尋さん・・・・』 『ああ・・・・』 『美咲・・・・』 『ん・・・?』 『ブ-ケ投げるぞ、取ってきたらどうだ?』 『うんっ』 結婚式当日、式が終わりチャペルの外へと出てきた 北山と真尋はこれ以上ない程の 笑顔を浮かべ、またそんな2人を優しく見守る仲間達に囲まれていた。 ブ-ケトスが行われる場所へと駆けていく美咲の後ろ姿を酒井は 眩しげな表情で見つめていた。 『良かったな』 ふと、隣にきた村上は、黒のス-ツに身を包んでいて それがまた 村上の長身の程を引き立たせていた。 『リ-ダ-・・・・』 『ええ、北山の奴も』 そう言って視線を北山の方へと向ける。 『バ-カ。北山じゃねぇよ、お前だよ。結婚、決めたんだろ?』 村上の言葉に酒井はしばし驚いた表情を浮かべながら、やがてそっと微笑むと言った。 『・・・かなり時間かかっちゃいましたけどね、ようやく決心つきました』 『ファンは号泣しっぱなしだな(笑)北山に黒沢にお前・・・・』 『・・・・泣かせっぱなしでしたけどね・・・・』 『それだけ美咲のこと大切にしてるって事だろ』 そう言って 村上は眩しそうに曇り空ひとつない 青空を仰いだ。 7月。本格的な夏が訪れたことを 熱い日差しが物語っていた。 『まぁ・・・そういう事になるんですかね・・・』 『これからも守ってやれよ?あいつのこと・・・』 『不器用ですけどね・・・・守ってやりますよ・・俺なりに・・・』 『雄二~!!取ってきたよ~!!』 白いブ-ケを手に 向かってくる美咲の笑顔を見つめながら 酒井は誓いの言葉のように囁いた。 『守ってみせますよ・・・精一杯・・・・・』 NEXT→ # by yuna-sos-0305 | 2006-05-21 20:46
![]() 届いた 白い包みをぼんやりと眺める。 今年で10年目。 それらは一度も開けられることなく ただ 俺に 時間の経過を物語る。 彼女が 俺の前からいなくなった事実と時間の経過を 切々と 語りかけてくる。 今年も 届いたその重く冷たい瓶をゆっくりと 持ち上げながら 独り言のように呟く。 『・・・・・黒沢にでも・・・やるとすっかな・・・・』 この行為が 10年にも 渡るこの行為が 何を物語っているのかは 分からない。 ただひとつ 俺に分かることがあるとするならば それは・・・・ 彼女から俺への せめてもの罪滅ぼし と言ったところだろうか・・・ 10年前 俺の前から姿を消したことへの 何も言わず 終わりを迎えることとなった恋への 罪滅ぼし 人は滑稽なものだと改めて思う。 過去に縛られたくないと 言いながら 心のどこかで 置き去りにした過去を 忘れられずにいる。 去る者とそこにとどまる者。 どちらが 辛いと言うならば それは 確実に とどまる者の方だろう。 去りゆく者は かすかな心の蟠りを 感じていても やがては 日常の生活に追われ そのことを忘れてしまう。 けれど そこに留まる者は 去りゆく者との 思い出と 計り知れない 痛みと共に いつまでも そのことを忘れられずにいるのだ。 自分は置いていかれたのか・・・・それはよく分からない。 けれど いつまでも残る この胸の燻りは一体なんなんだろうと思う 脳裏に浮かぶ想いを打ち消すように 幾分か伸びた髪をかきあげながら、キッチンへと足を運ぶ。 ************* 冷たく冷えたミネラルウォ-タ-を喉に流し込みながら いつの間にか春の装いを見せていた 外の景色にぼんやりと視線を向ける。 暖かな春の陽気に誘いを感じて グラスに残っていたミネラルウォ-タ-を一気に飲み干すと 携帯と財布をジ-ンズのポケットに入れ、玄関へと向かった。 ******************* 春は一番いい季節だと思う。 自分がこの季節に生まれたからなのか それとも単にこの季節が好きなだけなのか 理由はよく分からない。 けれど 春は自分の心の奥底で眠っていた感情まで ふと思い出させるような そんな気がしてならない。 事実、毎年のことなのに なぜか今までにないほどに 彼女の存在を認識している 自分が今、ここに居る。 ふと足を止めれば 『・・・・・・春・・・だな・・・・・・・』 満開の桜がそこには あった。 『今』という時間を惜しむように、大きく花開いた 桜は ただ 純粋に 春の訪れを喜んでいるようで その姿に 思わず愛しさを感じる。 しばらくの間、ぼんやりと桜を眺めていれば また ふと懐かしい出来事を思い出す。 『はいっ!!』 『うそ・・・これ・・・マジでお前が・・・?』 『そうだよ、もうてっちゃんのために頑張ったんだからね~(笑)』 『・・・・・・・』 『・・・・・・てっちゃん・・・・?』 『・・・・・・すっげぇ・・・嬉しい・・・・・ありがとな・・・?』 『うん・・・・・』 10年前 彼女が俺の前から 姿を消すまでは 1年に1度、誰よりも早く、 『お誕生日、おめでとう』 そう言って 笑顔で誕生日を祝ってくれていた 彼女が姿を消してからは 必然のように 仲間達が毎年、誕生日を祝ってくれている。 溢れる笑顔、絶えることのない笑い声 自分はとても幸福だと感じる一時。 けれど・・・・あの愛しさだけは・・・・・・・・ 【着信 北山陽一】 ふと鳴り出したメロディに我に返り、携帯をジ-ンズのポケットから取り出す。 『・・・・はい・・・』 『・・・あ、良かった。北山です。たぶん聞いてるというか・・まぁ毎年の事だから分かってると思うんですけど(笑)今黒ポンの家にみんな集まってるんですよ。 ・・・・・・だから・・・来て下さいね?みんなで・・待ってますから・・・』 『・・・・ああ・・分かったよ。・・・黒沢に言っといてくれねぇか?“美味い 赤ワイン持っていくからみんなで飲もうぜ“ってな・・・・』 『・・・分かりました、伝えておきます。それじゃあ・・・また後で・・・』 仲間の優しげな声を感じながら、携帯の通話ボタンを切り 赤ワインを取りにいこうと、桜並木の道から身を翻した時だった。 『てっちゃん!』 10年前に 失ったはずの 柔らかで 透明なその声が 背中越し、全身に伝わり、俺を捉えた。 ゆっくりと 振り返れば そこには 10年前 失ったはずの 彼女が佇んでいた。 『・・・・・・・ど・・・・うして・・・・・・』 胸の高鳴りを覚え、 うまく言葉を発することができない。 『・・・・・・・・・・・』 突然の再会に 再び俺の前に 姿を現した彼女にどうやって言葉を掛ければ いいのだろう・・・・ 浮かんでは消えていく言葉を 呑みこんで ありきたりな言葉を呟いた。 『・・・・・久しぶりだな・・・・・元気そうで安心したわ・・・・』 ありきたりな言葉。 けれど これでいいと これでいいのだと 自分に言い聞かす。 彼女は ただ何も言わず じっと俺を見つめ続けている。 『・・・・・・・なんだよ・・・・そんな深刻そうな顔して・・・・・・。』 『・・・・・・・・・・・・・・・』 『・・・・・・・いいよ・・・別に・・・・・』 『・・・・・・・・・・』 『気にしてねぇから・・・・・・10年前のことなら・・・・もう・・・俺・・・ 気にしてねぇから・・・・・・・だからお前も・・・・・・』 『・・・・・・・なん・・・・だよ・・・・・・・』 泣いていた。 白い頬に透明な雫を流して 彼女が泣いていた。 『・・・・・・なん・・で・・・・・・』 『・・・・え・・・?』 『なんで怒らないのよ!!・・・・あたしはてっちゃんから逃げたのに・・・・。 10年前のあの日・・・・てっちゃんから・・・逃げたのに・・・・それなのに どうしてよ!・・・・どうして・・・そんなに何もなかった様にできるのよ・・・!! あたしは・・・てっちゃんを傷つけたのに・・・・・・』 その震えている肩を抱き寄せたい衝動をぐっと抑え ゆっくりと語り出す。 『・・・・何もなかった訳ねぇじゃねぇかよ・・・・・』 『・・・・・え・・・・・・?』 『・・・・・俺はお前が全てだったのに・・・・10年前のあの日・・・・お前は 突然俺の前から姿を消した・・・・。・・・・どうして・・・居なくなったんだろ って・・・何も言わずにどうして俺の前から姿を消したんだろうって・・・・お前 が居なくなった理由をずっと探してた・・・考えてた。でも、時間はどんどん過ぎ てく。俺がどんなにお前を求めてもどんどん周りは・・・世間は、変わってく それなら・・・いっそこのままでいようって・・・・お前がどんな状況にあった としても・・・この気持ちだけは持ち続けようって・・・そう思ったんだ・・・。 ・・・・・・何もなかった訳じゃねぇよ・・・・』 『・・・・・・ごめんなさい・・・・・。私、自分のことばっかり・・・』 涙を拭いながら、そっと彼女が呟く。 外見的には変わったものの、その雰囲気も仕草も何もかも 10年前のままだった。 『・・・・・聞いたよ、すごい頑張ってるんだってね。』 『・・・・・まぁな・・・・・』 『私は、あれからずっと海外で暮らしてたの。なんていうか・・・その時の自分ってものを変えたくて・・・1度なにもかもリセットしたくて・・・ずっと海外に居たんだけど・・・・いろいろあって、結局日本に戻ってきちゃった・・・駄目よね・・・本当・・・・』 子供のような笑顔を浮かべる彼女に 愛しさがこみ上げる。 『・・・・・お前だろ・・・・?』 『・・・・・え・・?』 『赤ワイン。ずっと送ってきてんの』 『・・・・・バレた・・・・?』 『・・・・当たり前だっつ-の(笑)元、彼氏をナメんなよな(笑)』 『・・・じゃあもう送れないな~・・・』 思案顔の表情を浮かべる 彼女を見つめ 言葉を掛ける。 『もういらねぇよ、赤ワインは・・・・』 『・・・・・その代わり・・・ずっと居てくれねぇか・・・?俺の傍に』 『・・・・・・・え・・・・・・?』 不思議そうに 俺を見つめる彼女。 『10年前・・・俺はお前を失った・・・けど・・・10年経ってこうしてまた、お前 と出会えた・・・・・。だから・・・・また2人で生きていきたい・・・・』 『・・・・・てっちゃん・・・・』 『俺じゃ・・・嫌か・・・・・?』 その言葉に静かに首を振る彼女。 『・・・・・・・今日ね、ここに来たのは、てっちゃん・・・この桜の木・・ 好きだったから・・・だからまた会えるんじゃないかなって思って来たの・・・。 そしたら本当にてっちゃんに会えて・・・その上・・・・また一緒に生きていこう って言われて・・・・・・嬉しくて・・・嬉しいんだけど、驚きもあって・・・・・その・・・・なんていうか・・・・・』 そのまま聞いていたら まだまだ続きそうな彼女の言葉を ゆっくりと 自分の唇で塞いだ。 10年ぶりに口付けた 彼女の唇は柔らかく 春の香りがした。 『・・・・・・・・』 突然の口付けに 驚いた表情を浮かべる彼女に微笑むと ゆっくりと言葉を紡ぐ。 『続きはさ、また後で聞くから。ちょっと付き合ってくれねぇ?』 『え・・・・?』 『黒沢たちがさ、誕生祝いしてくれるっつ-んで、お前が送ってくれた赤ワイン 手土産に持っていこうと思ってよ。』 『うん』 4月24日。 『てっちゃん』 『ん・・・?』 『お誕生日おめでとう。』 俺が生まれた日。 『・・・ああ。ありがとな・・・・?』 この世界に生まれ 君と出会い 再びこうして君と愛し合える この奇跡を 今、幸せに思う。 ありがとう。 『紫穂梨』 『ん?何?』 『・・・・愛してる・・・・・。』 春の 暖かな風に吹かれ ふと誰かの言葉を思い出す。 【春は出会いの季節でもあるけれど、それと同時に再会と再生の季節でもあるんだよ】 彼女と再び出会えた事で、俺はまた再生を果たした。 心の再生を。 これからどんな事が待ち受けているかはわからない けれど どんな事が起ころうとも そのひとつひとつを 彼女と乗り越えていければ・・と思う。 俺が生まれた暖かな春は 俺にとって何よりもかけがえのないものを 運んできてくれた。 満開に咲き誇る桜を見つめると 隣に寄り添う彼女と手を繋ぎ マンションへの道を歩き始めた。 俺はこの日をきっと忘れないだろう。きっと・・・・・。 fin ~~~~~~ 黒沢『ねぇ、まだ来ないよ~村上。これじゃせっかくのカレ-が冷めちゃうよ』 安岡『・・っていうか誕生日にまでカレ-っていうのはどうかと・・・・』 酒井『主役のくせにどこをほっつき歩いてるんだか・・・・』 北山『・・っていうか・・・紫穂梨さんとヨリ戻したとかって・・メ-ルが来たんだけど・・・・・』 『『『うそっ!?』』』 # by yuna-sos-0305 | 2006-04-24 22:33
4月。 桜が咲き始め、何もかもが春の暖かな日差しに包まれるこの頃になると 酒井はどこか切なげな表情になることが多かった。 公には知られていない彼の事実を唯一知っていた黒沢はそんな酒井の 表情にやりきれない気持ちを感じていた・・・・。 ****** 「終わった、終わった~、黒沢!酒井!飲みに行こうぜ!」 いつものように仕事を終え、帰り支度をしていると、リ-ダ-である 村上が口癖のように黒沢達を誘ってきた。 「あ・・・うん・・・・」 酒井を気にしながら黒沢は村上に曖昧な返事を返す。 次の瞬間ふと目が合った酒井を、何気なく黒沢は誘った。 「お前も行くよな?」 が、酒井の返事はまったく反対のものだった。 「いえ・・・俺は今日はいいです・・・遠慮しときます・・・それじゃあ・・」 そう小さく呟くと酒井は静かに控え室を出ていった。 酒井が出て行った後、いつもとはどこか違う酒井の変化に 村上はポツリと呟いた。 「なんだぁ?酒井の奴。一体どうしたっていうんだよ・・・」 村上の言葉に 隣にいた黒沢は 「さぁ・・・・」と 小さく呟いた。 「黒沢、お前は行くよな?」 突然、村上にそう聴かれ、黒沢は間抜けな声で呟いた。 「え・・・?」 「だからお前は飲みに行くだろ?」 「え・・・あ・・・・」 黒沢が返事を迷っているのにも関わらず村上はどんどん話を進めていく。 「もう安岡と北山、先行かして待たせてるし、帰り支度終わったんだろ? さっさといくぜ!」 そう言って 控え室を出ていこうとする村上に黒沢は無意識のウチに叫んでいた。 「ごめん!リ-ダ-俺も今日パス!」 「おっ・・・おいっ!!黒沢!!」 村上の言葉も耳に入らない勢いで 控え室を飛び出した黒沢は酒井の後を追った。 自動ドアを出て、既に暗闇に包まれている街の中を見渡す。 右か左か。 ネオン溢れた街の中を黒沢は走り出した。 ********** 10分程、走り続けると小さな公園が目にとまった。 既に人の影はなかったが、その公園の隅に酒井はぼんやりと佇んでいた。 乱れた呼吸を整えてから、ゆっくりと公園の中へと足を進める。 公園の中に入り、一歩一歩近づいてゆく。 そして小さな声で呟いた。 「酒井」 何分かの沈黙の後、酒井はその大きな身体ごと黒沢の方を振り返った。 「どうしたんですか?みんなと飲みにいくハズじゃなかったんですか・・?」 酒井の言葉に 黒沢は黙ったままで。 しばらくすると 酒井を見つめながら言った。 「そのハズだったんだけどさ・・・思い出したんだよ・・・」 「・・・・何を・・思い出したんです・・・・?」 穏やかな口調で酒井が尋ねる。 「今日・・・命日だったろ・・彼女の・・・」 黒沢の言葉に少し驚きながら酒井は呟いた。 「・・・覚えてたんですね・・・」 「・・・・ああ・・・」 「もう何年になる・・・?」 「5年です。早いものです・・・」 そう言うと 酒井はそっと瞼を伏せた。 *********** 今日は酒井の彼女の命日だった。 5年前酒井は自分のファンだったという彼女と知り合い つきあい始めた。 俺たちメンバ-にこそ、自分のことはあまり語りたがらない 性格の故、彼女のこともメンバ-には話していなかったそうだが あなただけには・・と 彼女のことを打ち明けてくれた。 何度か酒井と彼女と3人で食事などもしたが とても気立ての良い 素敵な女性だった。そしてそんな彼女を持つ 酒井もまたとても 幸せそうだった。 幸せそうな2人を見て、いつかは結婚もするだろうと確信していた俺が 「そのこと」を知ったのは それからまもなくのことだった。 彼女が心臓病と判断されたのだ。 重度の心臓病ということで、すぐさま彼女は都内になる 病院に入院し、入院生活を余儀されることとなった。 はじめこそ、健康そのものだったが 1日、1日、日を追うごとに彼女の容態は悪化していった・・。 だが、どんなに苦しい状態だろうと彼女はけして笑顔を 絶やさなかった。それどころかまだまだミュ-ジシャンとしては 売れてなかった俺達を いつも心から応援してくれていた。 そして酒井も仕事で疲れているのにも関わらず 毎日彼女の入院する病院へと通い続けた。 俺は必死で祈り続けた。 彼女が助かるようにと・・。その想いはきっと酒井も同じだったことだろう。 今でも思い出すことがある。 静まりかえった深夜のロビ-で いつも気丈にふるまっていた酒井が ふと漏らした一言。 「・・・砂時計・・みたいですね・・・」 「・・・え・・?」 「・・・彼女の命・・・。1日、1日、日を追うごとに残りの砂がなくなってく みたいで・・・・」 「・・・・・酒井・・・・」 「俺が・・彼女にしてやれることって・・なんなんでしょうか・・ 俺は彼女にいつも支えられてきました・・・正直この5年間彼女が居たから ゴスペラ-ズとしてもやってこれたんだって・・そう思ってます・・。だけど俺は 彼女に何もしてやれてません・・俺が彼女にしてやれることってなんなんですかね ・・俺にはもう・・・分かりません・・・・」 そう呟き 酒井はそっと俯いた。 そしてその3日後 彼女は眠るようにこの世を去った・・・。 ******** 「5年か・・早いな・・・・」 澄み切った夜空に輝く星を見つめながら黒沢は呟いた。 「・・・早いですね・・・」 隣で自分と同じように星を眺めている、酒井に黒沢は静かに訊いた。 「・・ひとつ訊きたいことがあってさ・・・」 「・・・・なんですか・・・?」 夜空を見つめたまま、酒井が呟く。 「・・・・5年前・・お前彼女が亡くなる時・・・」 そう呟いた黒沢の言葉に続くように 酒井はポツリと呟いた。 「・・・・頑張ったんですけどね・・・結局・・間に合いませんでした・・」 「・・・・・そっか・・・・・」 「指輪・・・・」 酒井がポツリと呟く。 「え・・・?」 「・・・・結婚指輪用意してたんですよ・・もう付き合って5年目だったし 彼女の命が短くても彼女がずっと支えてくれたことは本当に嬉しかったから、 ケジメって言ったら変ですけど、なんていうか形のあるものを残したかったんで すよね・・・ほんの一瞬でも彼女と・・恋人としてじゃなく夫婦としていたかったから・・・」 「・・・・・・・・・」 「俺・・彼女には初めて会った時からなんていうか、不思議な透明感を感じてたんです・・・」 「透明感・・・・?」 「ええ。なんていうか・・抱き締めたらフッと消えてしまいそうな・・そんな感じがいつもしてて・・いつだったか彼女を抱き締めたに時に彼女に訊かれたんです」 「“どうしていつもそんなに強く抱き締めるの?”って・・・。俺、彼女にそう言われるまでそんなに彼女のことを強く抱き締めてたことに自分でも気付いてなくて・・だから言ったんです・・・“君はすぐにでも消えてしまいそうになるから”って・・・そしたら彼女・・笑って・・“それじゃあ雄二がずっと消えないように抱きしめててね”って・・・俺、彼女の言葉に笑いながら“分かったよ” って答えたんですけど・・・まさか現実になるなんて・・皮肉なものですね・・・人生って・・・」 そう言って、酒井は 小さく笑った。 そんな酒井を見つめながら 黒沢は言った。 「・・・本当に彼女のこと・・・好きだったんだな・・・・」 夜空を見上げながら 酒井は小さく呟いた。 「ええ・・・・・・・心から・・・・・愛してました・・・・・・」 春の風がそっと頬を撫でていく。 短い沈黙の後、黒沢はポツリと呟いた。 「家で飲まないか・・・?」 「いいですね・・飲みましょうか。」 そう言って 笑顔を浮かべた。 とても穏やかな笑顔だった。 *********** 3杯目となるウォッカを空けたところで それまで静かに飲み続けていた酒井がそっと呟いた。 「あなたには初めて話すことですけど・・・」 「・・・・・ん?・・・・・」 「実は・・・」 「俺と彼女の間には・・・子供がいたんです・・・」 「・・・え?こ・・・子供って・・・酒井・・・お前・・」 慌てる黒沢に対し、酒井はクスリと笑って言った。 「隠し子じゃありませんから(笑)安心してください。」 「でも・・子供って・・・・」 驚きを隠せない黒沢の問いに、酒井はウォッカを一口飲むと 言った。 「妊娠してたんです。彼女・・・・。 彼女が亡くなった後、初めて彼女の担当医からそのことを聞かされて 何も気づいてやれなかった自分に心底腹が立ちました・・・。 担当医の先生は“貴方は何も悪くない“って言ってくれましたけど・・・」 時計の針が静かに時間を刻む音が 静かな部屋の中響く。 「3ヶ月だったそうです・・・もし無事に産まれていたら・・今頃は・・・」 そう言って言葉を無くした 酒井を見つめながら黒沢はゆっくりと言葉を紡ぎ出す 「・・・・・成長してただろうな。きっと。いい父親になってたと思うよ。お前。」 グラスの中の氷を見つめながら 現実となっていたかも知れない けれど もう叶う事のない 未来図をふと心の奥底で思った。 「・・・・そうですかね・・・」 グラスに残ったウオッカを飲みながら酒井が小さく呟く。 「ああ・・“パパじゃありません!お父さんって呼びなさい!“って子供を叱ってる姿が絵に浮かぶよ(笑)」 黒沢は酒井の話を聞きながら テ-ブルの上にあった、ウォッカの瓶に手を伸ばした。 「子供だけでも・・・なんとか助けることができなかったのか・・と何度も悔やみました・・それと同時に今・・彼女との子供だけでも生まれていたら・・自分の人生はまた違ったものになっていたのかと・・・・」 「俺はあの時・・・彼女だけじゃなく・・・彼女と自分を繋ぐ小さな命まで 失ってしまったんですよね・・・・・」 短い沈黙の後 黒沢はグラスに残ったウォッカを啜りながら言った。 「酒井・・・お前は良くやったよ・・・最後まで彼女のこと看取ってやっただろ? それだけで十分だよ。お前は・・・悪くない。」 酒井を見つめゆっくりとグラスを回す。 「今も・・・取ってあるんですよ・・・・」 囁くように 酒井が呟く。 「取ってあるって・・・?」 酒井の言葉を反復しながら 彼を見つめる。 「指輪です。自分の結婚指輪と、彼女に渡そうと思ってたエンゲ-ジリング・・ 彼女の分の結婚指輪は、彼女の指にはめたまま棺に入れたんです。けど・・・ やっぱりなかなか捨てられなくて・・・きっぱり捨てられればいいんですけど・・ 俺・・・そういうとこ駄目なんですよね・・・・」 そう言って 小さく笑う 酒井を見つめながら黒沢は 天井を仰ぐと 言った。 「男も女も・・みんな情けないもんさ・・・」 「・・・・・・・」 「誰かを好きになって・・愛して。想いが届かなくて・・泣いて・・笑って・・」 その夜、酒井は黒沢の家で酒を飲み明かし そのまま眠りについた。そして夢を見た。 彼女の夢だった。 君の幻想が 今も 心から離れない。 誰よりも愛しい君を無くして 時間だけが足早に過ぎ去っていくけれど 俺の心は君を失った あの日のまま動かない。 時を刻むことを忘れてしまった時計のように・・・・ 時が・・止まりそうだ・・・・・。 そんなこと言わないで。 誰? 私は幸せだった。あなたに出逢えて。 貴方と共に過ごすことができて。 そして何より、雄二。 貴方を愛して、貴方に愛されて。 本当に幸せだった。 本当に・・・ありがとう・・・・。 その瞳 その声 その笑顔 甘い・・・・・・・・記憶・・・・・・・・・ **************************** 次の日、黒沢の家から帰宅し、ポストを開けると そこには1通の手紙が届いていた。 白い封筒に 大きく 【酒井雄二様】と書かれている。 紛れもなく 彼女だった。 5年前 永遠の別れを告げた 彼女の文字がそこには書かれていた。 封を開け、丁寧に折り畳まれた便箋を開けば 彼女の丁寧な文字が目に飛び込んでくる。 「・・・酒井雄二様・・・」 「酒井雄二様 あなたがこの手紙を読んでいる頃 私はきっとあなたの傍にはいないでしょう。 自分の運命を予知している訳ではないけれど なんだかそんな気がするのです。 あなたと出逢ってからのこの5年間、本当に楽しかった・・・ 23年間生きてきたこの人生の中で・・・5年間という時間はとても短いものにも 思えるけれど・・・これまでの人生に勝るぐらい 雄二と出会って一緒に 過ごしてきたこの5年間は私にとってなによりの宝物です。 だから約束してください。 もし私があなたの傍からいなくなっても・・・姿が消えても 悲しまないで・・・・・。 私は・・いつでも・・どんな時でもあなたの・・・雄二の傍にいます。 どんなに遠く離れても・・・永遠の別れが来たとしても・・・・ 2人の想いはきっと1つだと思うから・・・。 本当にありがとう・・・。 あなたに愛されて あなたを愛せたことを心から誇りに思います。 そして・・・いつも・・あなたの幸せを心から願ってます。 この先の人生も ずっとずっと あなたが笑顔でいられますように・・・。 Your life was full of happiness and blessings ・・・ 2000.3.1 藤谷紗雪 」 手紙を読み終えたと同時に 胸に熱い物が込み上げた。 涙が溢れ 唇が震える。 鼻につんとした 痛みを感じる。 綺麗に並んでいる 彼女の文字を見つめながら 手の平で 涙を拭う。 「ほんっと・・・・最後まで・・・ものわかりいいのな。お前って・・・・・ 最後の最後くらい・・・・我が儘言ったって 構わないのに なんでそこまで・・・優しいんだよ・・・ほんっと・・俺、最高の彼女を 持ったよ・・・・・」 声が震える。 「・・・・・・・・ごめんな・・・・・俺・・・・お前に何にもしてやれなくて・・・・本当ごめんな・・・・・・・・・」 こみ上げてくる想いを胸に ふと空を仰げば 雲一つない 青空が広がっていた。 【私は・・いつでも・・どんな時でも・・あなたの・・雄二の傍にいます・・・】 便箋に書かれた 言葉をふと思いだし そっと呟く。 「俺、頑張るからさ・・・見守っててくれよな?少しカッコ悪いところも見せるかもしれないけど(笑)・・ずっと見守っててくれよな・・・?」 ゆっくりと深呼吸をすれば ふと 彼女の声が聞こえる気がして そっと微笑みながら囁いた。 「・・・・・ありがとな?・・・紗雪・・お前に出逢えて本当に良かったよ・・」 優しげな風が 春の訪れを告げるように そっと酒井の頬を撫で ゆっくりと 通り抜けていった。 暖かな日差しに 照らされながら そっと微笑む。 「もう大丈夫だから・・・」 小さく そっと 呟くと ゆっくりと 背伸びをし 丁寧に 綺麗な文字が並ぶ その便箋を折り畳んだ。 穏やかな春の日の出来事。 寂しがり屋の彼女に 安らかな幸せを・・と そっと願いながら また この瞬間 新しい1歩を歩き出す。 fin ![]() # by yuna-sos-0305 | 2006-04-08 12:11
![]() 春の訪れを告げる春風のように 世界で たった1人の君を包んであげたい・・・・。 「あ・・・・」 レコ-ディングの休憩時間、携帯を開けば視線が止まる。 「どうかしましたか?」 そう言って紙コップ片手に北山がひょっこりと姿を現す。 「香織・・電話くれたみたい・・。しかも12時30分って、ほんの2,3分前だし・・・」 小さく溜め息をついてソファ-に沈み込む。 「黒ポン?」 「なんかさ・・思うんだよね、こうやって電話の1本も出れないで本当悪いなぁ~って・・それでなくても香織にはいつも寂しい想いさせてるのにさ・・なんか・・・情けなくて・・・」 「・・・・それはみんな同じですよ・・」 優しげな口調で北山がそっと 呟く。 「でもさぁ・・別に俺、北山みたいにマメじゃないし、かと言って安岡みたく甘い言葉をかけてあげられる訳でもないし・・・リ-ダ-みたいに自信なんてなければ酒井みたいに相手を懸命に思うこともできないし・・なんかすっごい中途半端だなって・・・そう思っちゃうんだよね・・情けないけど・・・」 「・・・黒ポンだって俺たちが持ってないものを持ってるから・・香織さんは・・好きになったんじゃないんですかね?」 「・・・例えば・・・?」 俺のその問いに ゆっくりと 微笑んで 北山は静かに呟いた。 「優しさ」 ******** 北山から言われた、「優しさ」という言葉がぐるぐると頭の中を駆けめぐる。 「優しさかぁ・・・」 ポツリと呟いてガラス越し 映った自分の姿を見つめる。 そういえば・・・昔、母親がこんなことを言っていた。 「あんたはよく、自分の名前が女の子みたいだって言ってたけど、薫の名前の意味は初夏の香り・・新しい季節の香りを運ぶ薫風って意味なのよ・・?」 「薫風・・・?」 「そう。新しい季節の香りを運ぶ薫風のように全てを包み込めるような優しい人になって欲しいって・・お父さんと2人でつけたのよ・・」 母親の言葉を思い出し、そっと呟く。 「全てを包み込むなんて・・俺そんな強くないよ・・・・」 溜め息をついて 手に持っている携帯電話を眺める。 本当は今すぐにでも会いたい。 会って彼女を抱き締めたい。 けれど今のスケジュ-ルで無論そんな事は無理だった。 「俺・・・本当に香織のこと幸せにしてあげられてるのかなぁ・・・」 小さく溜め息をついて スタジオへと戻ろうと歩き始めた時 手に持っていた 携帯電話が着信を告げた。 慌ててディスプレイに視線を向ければ 【香織】の文字が浮かび上がっている。 「・・・香織・・・?」 ぼんやりと呟きながら 携帯の通話ボタンをゆっくりと押し 耳元に携帯を押し当てる。 「・・・もしもし・・・・?」 「・・・・薫・・・・?」 その優しい声が 耳元に響き渡る。 『・・・香織・・・香織ごめんね、俺・・・電話出れなくて・・・』 そう言って小さく呟けば 『HAPPY BIRTHDAY!!』 香織の柔らかで優しげな声が耳元に広がった。 『えっ・・・??』 『お誕生日・・おめでとう・・・・・』 香織からそう言われ、今日が自分の誕生日であることを ゆっくりと思い出す。 4月3日。俺の誕生日。 俺が生まれた日 『・・・・・もしかして・・忘れてた・・・・・?』 『・・・うん・・・・すっかり・・・・・』 驚きを隠せないまま、返事を返せば 彼女の小さな笑い声が また 受話器越し響いて 俺の耳元をくすぐった。 『・・・・今日は遅くなりそう?』 『・・・・レコ-ディングがあるから・・・10時過ぎちゃうと思うけど・・・』 『・・・・じゃあ待ってる。薫が帰ってくるまでにご馳走一杯作って、薫が帰ってきてくれるの待ってるから・・・・・』 『・・・・香織・・・・』 『薫が生まれたこの日を一緒にお祝いしたいから・・・・・』 不安とか彼女に対する気負いとか、そういったものは 全くといっていいほど 感じなくなっていた。 香織の優しい言葉 ひとつひとつに 癒されている自分が そこにはいた。 さっきまでの不安を拭い、 こんなにも優しい気持ちにさせてくれた 彼女に心から感謝の言葉を 囁く。 『・・・・香織・・・・・?』 『・・・・ん・・・・?』 『・・・・ありがと・・・・俺、香織に出逢えて本当に良かったよ・・・』 『・・・・薫・・・・・』 『遅くなるかも知れないけど、待ってて?俺、必ず帰るから・・・今日この日最後の2時間だけでも・・・香織と一緒に過ごしたい・・・香織の傍に居たいんだ・・・・・・』 『・・・・・・うん・・・待ってる。薫が帰ってくるの・・待ってるから・・』 姿は見えないけれど こころなしか 彼女がそっと携帯を 強く握りしめた そんな気がした。 『・・・・生まれてきてくれて・・・ありがとう・・・・薫に出逢えて・・・・本当に良かった・・・・・・』 『・・・・俺こそ・・・ありがとう・・・こうして香織に出逢えたこと・・・・これ以上の幸せはないよ・・・・・・』 まだ 幾分か 電話を切るのが 名残惜しそうな彼女に そっとその言葉を囁いて、 通話ボタンを切った。 そっと窓の外に 視線を向ければ きらきらと 輝く 太陽の陽ざしを 浴びている大きな大木の木を そっと通り抜けた風が 優しく揺らしていた。 『新しい・・季節の香りを運ぶ薫風か・・・・』 母親から聞いた 自分のその名前の意味を そっと呟きながら 暖かな陽ざしを浴びている 大木の木を見つめ 誓いのように囁いた。 『今すぐには無理かも知れないけど・・・・少しずつ・・・いろんな事を包み込める人間になっていくよ・・・・だから・・・もう少し待ってて・・・?もう少し経ったら・・・香織のこと・・・母さん達に紹介するからさ・・・』 『あなたの風になって全てを包んであげたい・・・いつも・・・いつの日にもそれが僕の答えさ・・・・・』 そっと 歌いながら やがて訪れる新緑の季節を心に感じ 黒沢はゆっくりと スタジオへと歩き出した。 『黒ポン~?どこ~?』 『ごめん、ごめん・・・どうしたの?』 『リ-ダ-がさ、俺歌入れしてたら“気合いが入ってねぇ!“とかって 苛めるんだもん(泣)』 『・・・・また・・・・・(苦笑)?』 『別に苛めてなんかねぇよ・・・安岡の気合いの問題だろ?』 『まぁ、まぁ、まぁ・・・(苦笑)』 その後、俺は香織に1通のメ-ルを送った。 『From 黒沢薫 subject 香織へ ねぇ・・・香織?俺は いつも どんな時でも 香織を想ってる。香織を心から愛してる。俺が俺であるために 俺には香織が必要なんだ。香織が香織であるために・・・俺は必要な存在になれているのかな?もし必要な存在になれているとしたら・・・これ以上幸せなことはないよ。俺の願いはただひとついつ いつの日でも 香織を守り続けること。香織を優しく包んであげれるような・・・そんな男でありたい・・・。今、心からそう願っています。もう少し経ったら・・新緑の季節になったら・・・香織に伝えたいことがあるんだ・・・・だからそれまで待っていて欲しい・・・。今夜は遅くなるかも知れないけど、必ず行くからさ・・・待ってて?さっきも電話で言ってくれたけどやっぱり直接、香織の口から『おめでとう』って言ってほしいからさ(笑)この世界に生まれて、香織と出逢えたこの運命に心から感謝します・・・。4月3日 俺が生まれた暖かな春に。 薫』 fin # by yuna-sos-0305 | 2006-04-03 14:25
「北山さん・・・・・・」 酒井と共にあてのない旅を続けてきた真尋の瞳に懐かしい それでいて とても優しげな微笑みを浮かべた北山が映っていた。 「・・・・久しぶり。元気そうで安心したよ」 そう言って 小さく微笑むと北山はゆっくりと言った。 「・・・・・さて、何から話そうかな・・・・・」 小さく呟くと、北山は目の前に広がる海を見つめた。 ***************************** 「・・・・・・・決めたって・・・・・」 そう呟くと 安岡は向かい側の席に座っている真那を見つめた。 「・・・・お姉ちゃんがいなくなって・・・いろいろ自分なりに考えたんです・・・。どうして圭介さんが いるのに・・・幸せだったハズなのに・・・・子供だって・・・できたのに・・・・それなのにどうして どうしてお姉ちゃんはいなくなったんだろうって・・・・・最初は反発もありました・・・・こんな形で 私や圭介さんの前から姿を消しても何も問題は解決しないって・・・そう思ってました・・・・。 でも・・・・1ヶ月経って分かったんです・・・・・たぶんきっと・・・お姉ちゃんは・・圭介さんのところには 戻らないんだろうなって・・・・・。これからの事とか考えたら・・・キリがないですけど・・・でも 私がどうこう言ったところでこれはお姉ちゃんの人生だから。・・・・だから私がどうこう言う べきじゃないんですよね・・・・・私もそろそろお姉ちゃんばかりに頼ってないで自分の力で 生きていかないといけないんですよね・・・・・・・誰が間違ってる訳でもない・・・・そうですよね・・・ ?」 少し潤んだ瞳で 真那は安岡に問いかけるようにそっと顔を上げた。 「・・・・・・・誰も間違ってなんかないよ・・・・分かってることは、君のお姉さんも・・・酒井さんも そして・・・・神崎さんもみんな幸せになりたいと願ってた・・・・それは嘘じゃない。でも、だからと 言ってお姉さんを責めないで欲しいんだ・・・・・センセも・・・・北山も言ってたと思うけど、 君のお姉さんは相当苦しんだハズだから・・・・誰にも言えない想いを抱えて悩んでたと 思う・・・・その上で必死で自分の人生を生きていこうとしている・・・・それだけは・・・・ 分かってあげて欲しいんだ・・・・・・」 ゆっくりと自分の想いを語ると 安岡はゆっくりと息を吐きだした。 まだ少し 憂いが残る真那を見つめながら安岡は髪をかきあげながら言った。 「また話したかったらさ、いつでもここに来なよ。センセが今のところ不在だから、ちょっと 心寂しいかもしんないけど(笑)俺もリ-ダ-も黒ポンも いつでもいるからさ。 ・・・・・そうだなぁ・・・少し騒々しいかもしんないけどたまにはみんなでお茶するってのも いいかもね(笑)?」 満面の笑みを浮かべる 安岡を見つめながら 真那は小さく微笑むと、かすかに残っていた涙をそっと拭った。 ガラス越しの 外には燦々と陽が照りつけていた。 「もうすぐ8月かぁ~・・・・・酒井さん・・・何してるかなぁ・・・・・・」 太陽の陽ざしに照らされた 街並みを見つめながら 真那は 真尋のことをぼんやりと思い浮かべていた・・・・ ********************* 『・・・分かってるんです、こうやって雄二さんや北山さん達に甘えていても 何も変わらないってこと・・・私自身がちゃんと決断しなければ先へは進めないって こと・・・逃げてばかりいちゃ・・・駄目なんですよね・・・・』 『真尋・・・・・』 心配そうに呟いた 酒井にそっと微笑むと 真尋は目の前に立っていた北山を見つめ、言った。 『・・・・私の話・・・聞いてくれますか・・・・?』 開け放した窓から 聞こえる波の音が 静かに部屋の中を包み込んでいた・・・。 NEXT→ # by yuna-sos-0305 | 2006-03-01 21:18
『公表?』 『そ。酒井が美咲の恋人であることを公表すんだよ』 『そんな公表なんてしたら、あとが大変なんじゃない?情報っていうのは1度流れたら全てに伝わるんだから』 村上の横顔を見つめながら、安岡が口を開く。 『っていうか・・病気であることを公表して雑誌に手記でも載せたらいいんじゃないかな?』 何気なく呟いた、北山の一言に村上達は北山を見つめた。 *************** 『~読者の皆様へ お久しぶりです。水野美咲です。皆さんとこういった形でお会いするのは初めてなので 少しばかり緊張を感じつつ(笑)今日は皆さんにご報告したいことがあって、こうしてペンを 取りました。実は、私、水野美咲は現在都内の病院にて治療をしています。時間は少しばか りかかってしまうかもしれませんんが、今は良きパ-トナ-と良き時間を過ごしているので ご心配なく。早くまた元気になってスタッフのみんなと仕事ができるよう頑張りますので これからも応援よろしくお願いします。水野美咲~』 美咲の手記が掲載されたファッション雑誌を見つめながら安岡達は次々と感想を 述べた。 『良きパ-トナ-だって、すごいじゃん酒井さん。』 『っつ~か、やっぱこうしてみるとモデルだよな~』 『美咲ちゃんもこう言ってくれたことだし、やっぱこの後はツ-ショット写真でも載せたら?』 そんな安岡達に、酒井は小さく呟いた。 『・・・・あんたら・・・・おもしろがってるだろ・・・・・・』 『・・・・・・・・・・・・・』 ****************************** 『美咲ちゃん、出席できそう?』 曲作りの手を休めながら、北山は酒井を見つめながら言った。 『ああ・・今のところ体調もいいし、1泊2日で外泊することになったよ』 『そう・・それなら良かった・・・』 ホッと息をつく、北山を見つめながら酒井はポツリと呟いた。 『あと1週間か・・・・』 『真尋は今日もエステに行ってるよ(笑)』 『それもお前のためだろ(笑)?』 『まぁね(笑)』 『黒ポンが、“北山に先越されるとは思ってもみなかった”って悔しがってましたよ(笑)』 幾分か、温くなったコ-ヒ-を啜りながら 酒井は北山を見つめた。 『俺も自分でビックリだよ(笑)・・・でもなんていうか・・もうこれ以上、真尋を 放っておいたら真尋がどこかにいっちゃう・・・そんな気がしてさ・・・・』 『・・・・・・・』 『・・・・雄二ならさ・・・』 『ん?』 『尚更なんじゃないの?そういう気持ち・・・』 そう言って 北山はじっと酒井を見据えた。 『結婚しろって事か・・・・?』 『そうじゃなくて・・・美咲ちゃんのこと・・ちゃんとつかまえていた方がいいって 事。こういう状態が続くようだったらさ・・尚更、結婚って事はちゃんと考えてた 方がいいと思うよ?』 『・・・・・・・』 現実的な北山の言葉に、酒井は何も言い返すことができなかった ************************* 『美咲ちゃんは結婚とか考えてたりする・・・?』 『どうしたんですか突然・・・・』 病室に備え付けられていた椅子に座りながら、真尋はゆっくりと話し始めた。 『・・・ほら私も結婚して、再来月には香織ちゃんも結婚するでしょ?だからなんて いうか・・美咲ちゃんも酒井さんと考えたりしないのかなって・・・』 『・・・・結婚かぁ・・・将来的にはもちろん、雄二といい家庭を作れたらなって 思いますけど・・・雄二は歌、私はモデル。お互いにそれぞれやりたい事があるから 今はまだいいかなって・・・・』 自分の考えをゆっくりと述べると 美咲はそっと微笑みを浮かべた。 『美咲ちゃんって大人~』 『そんなことないです、大人のフリしてるだけ(笑)』 『そういえば今日は酒井さん来ないの?』 『・・・う~んどうだろ?特に何も言ってなかったんですけど・・・』 “美咲ちゃんのことちゃんとつかまえていた方がいいんじゃないの?“ “こういう状態が続くようだったら・・・” 『あ・・・雄二!』 『・・・噂をすれば何とやらね(笑)』 『今日は?仕事はこれから?』 『あ・・・ああ・・・ラジオ出演が1本・・・・』 そう言って、気付いたように酒井は人気の洋菓子店の袋を掲げて見せた。 『あ、そうそうプリン買ってきたぞ。この間、食べたいって言ってただろ?』 『本当?』 そう言って 輝いた表情を浮かべながら美咲は袋の中を覗きこんだ。 『良かったら真尋さんも食べませんか・・?』 『ここのプリン、すっごく美味しいんですよ~』 そう言って、美咲が真尋に笑顔を向ける。 『本当?それじゃあ、ひとつ貰っちゃおうかな~』 『真尋さんはこれから仕事・・・ですか?』 『ううん、今日はリハ-サルなの。』 穏やかな笑みを浮かべながら そう言ってゆっくりと答える。 『リハ-サル?』 『結婚式の。』 『・・・あ・・そっか・・・』 そう言って酒井は少し恥ずかしそうに頭を掻いた。 『ブ-ケは絶対、美咲ちゃんがとってね(笑)』 『真尋さん・・・・』 『あたしブ-ケは美咲ちゃんがいる方向にしか投げないから(笑)』 『・・・・あ、いけない。それじゃあ失礼します』 『じゃあ美咲ちゃん、今度は結婚式でね』 小さく頭を下げながら、笑顔を浮かべ病室を出ていく真尋に美咲は笑顔で 微笑んだ。 『はい!』 **************** 『なぁ美咲・・・・』 『ん・・・・?』 『今、病院に入院してること・・お父さんだけには知らせとかないか?』 『えっ・・・・?』 驚きの表情を浮かべた美咲に 酒井は穏やかな笑みをそっと浮かべながら ゆっくりと話し始めた。 『今までこうやって何度も入退院繰り返してきたけど、今回ばかりは少し時間が 必要みたいだしさ。俺もこういう仕事してるし、ほら・・何かあった時はやっぱり 家族と連絡取れた方がいいだろう?』 『・・・・・・・・』 『やっぱり・・・お前の身体・・心配だからさ・・・』 自分の身を案じてくれている酒井に対して、美咲は自分でも驚くほどの 言葉を呟いていた。 『・・・・貧乏くじ引いちゃったね・・・・・』 『え・・・・・?』 『世の中・・健康な人なんてたくさんいるのに・・雄二は生まれつき心臓病の 私なんかと出会って・・とんだ貧乏くじ引いちゃったよね・・・・』 『・・・・・・なに・・・言ってんだよ・・・・』 『いいんだよ・・別に今すぐ捨ててくれたって・・・その方が雄二もすっきり するものね・・・・・』 『・・・・・・・本気で言ってるのか・・・・?』 『本気じゃなかったら、こんなこと言わない』 『・・・・・・・・・』 『・・・・・そうか・・・・・』 どうして・・・素直になれないのだろう・・・・ 言いたいことは あなたに伝えたい事はこんな事じゃないのに・・・ 『俺は美咲に出逢って、何一つ後悔したことなんてない。でも美咲がそんな風に 思ってたなんて・・・・初めて知ったよ・・・・・』 1人だった 失うものなんて何もないと思っていた。 あなたに出逢った 『失うものなど何もない』とは 言えなかった。 1人でいる寂しさより 2人でいる方が孤独を感じるのはなぜなのだろう こんなにも あなたが愛しいのに・・・・・ NEXT→ # by yuna-sos-0305 | 2006-01-03 16:07
『香織さんって料理うまいんだな・・・・』 目の前に広げられたパスタやサラダを眺めながら酒井はそっと呟いた。 『何せ、あの黒ポンが認めた人ですからね(笑)』 マグカップに注いだス-プを啜りながら、北山がクスクスと笑う。 『2人で共同で店でも作ったら大繁盛だな、きっと』 そう言って 北山を見つめながら酒井は空になった皿の前でゆっくりと両手を合わせた。 『じゃあ、雄二から勧めてみたらどうですか(笑)?』 笑顔を浮かべながらそう言って北山は椅子から立ち上がった。 村上がスタジオを飛び出してすでに1時間以上が経過し 窓の外は夜を彩る光で溢れていた。 『さて・・と。腹もふくれたことだし、仕事でもするかな・・・』 『あ、じゃあ新曲のトラックダウン手伝ってくれない?』 酒井の言葉に反応して、北山が言った。 『たしか今回の楽曲はJQが提供してくれたんだよな?』 『ええ、忙しい合間をぬって作ってくれたらしいですよ』 そう言って北山が微笑んだ瞬間 携帯の着信が鳴った。 『ちょっと、ごめん。』 鳴り出した携帯を素早く手に取ると、北山は少し離れた場所へと移動していった。 『どうした?』 携帯片手に戻ってきた 北山の嬉しそうな笑顔を見つめながら酒井は言った。 『なんでもウェディングドレスの試着が明日の午後あるらしくてさ、来て欲しいって・・』 『そうか・・・何かお前、幸せそうでいいな・・・・』 仲間の幸せを感じながら、酒井はゆっくりと呟いた。 『なに言ってんの。雄二にだっているでしょ。美咲ちゃんが。』 『え・・・・いや・・・それは・・・その・・・・・』 『あ~っ!!!俺がいない間に何か食べた!何か食べた~!!!』 そこには仮眠から戻ってきた、安岡の姿があった。 『・・・・ヤス・・・・・・』 『・・・・・・お前はガキか・・・・・・』 ポツリと呟きながら、酒井は小さく溜息をついた。 ********************* 『てつ?こんなとこで何してんの?』 香織との夕食を終え、スタジオに向かおうとしていた視線の先に 村上の姿を確認し、黒沢は声を掛けた。 『スタジオに戻れなくてよ・・・・』 『え?何で?』 不思議そうな表情を浮かべる黒沢を見つめると、村上はポツリと呟いた。 『酒井のこと・・・責めちまった・・・・』 『・・・・・・・・・・・』 『あいつが苦しんでるのは分ってたハズなのに・・・・・・あいつは酒井はさ、美咲と出会った時から美咲の病気のことで苦しんできただろ?だからこそあいつはいつでも笑顔でいるのに・・・ 美咲のために・・・努力してるのに・・・責めちまった・・・・・・・』 『てつ・・・・・・・』 『こんな俺が・・・リ-ダ-でいる資格なんてねぇよ・・・ねぇんだよ・・・・・・』 そう言うと 村上は黒沢の前で泣き崩れた。 頬をなでる 初夏の風に 村上の抱えるやりきれない想いを感じて 黒沢はそっと村上の肩を抱いた。 ********************** 『リ-ダ-戻ってこないね・・・・』 『そうだな・・・・・・』 『そんな心配しなくてもそのうち戻ってくるって』 『・・・・・・・・・』 『単細胞のやることなんて、いちいち気にしてたらそんなやっていけないよ~?』 まだ幾分か残っていた、香織の料理を食べながら 安岡は2人の顔を見つめながら笑った。 『誰もそんなこと言ってない。』 安岡の言葉に反するように酒井がゆっくりと口を開く。 『別に。ただ代りに言ってあげただけ』 そう言うと、安岡は再び料理を食べ始めた。 『それにしても遅すぎるな・・・何かあったかな・・・・』 懸念と心配を含んだ声で北山はポツリと呟いた。 『・・・・きっと・・・・』 酒井の言葉に続くように酒井が口を開いた。 『きっと・・・自分を責めてるんだと思います・・・あいつは・・・・・村上は・・・優しいやつだから・・・・・』 『・・・・本当いい年して、何やってんだろうな・・・俺達・・・・・』 北山の横顔を見つめながら酒井はポツリと呟いた。 ********************* 『北山さんと真尋さんの結婚式決まったの?』 『ああ、7月20日。なんでも国立のチャペルらしくて・・ま、北山らしいって言えばらしいですけどね(笑)一緒に行こうな・・・・』 『うん。でもウェディングドレス姿の真尋さん、綺麗だろうな~。なんか考えるだけでもワクワク しちゃうね(笑)』 そう言って笑顔を向ける 真尋の姿に酒井はこれ以上ない程の幸せを感じていた。 真尋と共に過ごす時間が今の酒井にとって何よりの幸せであり、かけがえのないものだった。 『・・・・次は俺達の番かな・・・・』 その真っ直ぐで綺麗な髪を優しく撫でながら そっと呟く。 『オレ達?』 酒井の言葉にふと、視線を向けてきた真尋に 戸惑いを感じながら、酒井はわざと言葉を濁した。 『えっ・・・いや・・・・・・・』 『・・・・今日、真尋さんに電話してみようかな・・・・・』 『・・・・ああ・・・真尋さんきっと喜ぶぞ』 『雄二』 『ん?』 『ありがとう・・・・』 真尋の心からの笑顔を見つめながら 酒井はひそかに心に芽生え始めていた気持ちを改めて 実感していた。 ******* 『もしもし・・・あの・・・美咲ですけど・・・・』 『・・・美咲ちゃん!?』 時計の針が8時を回った頃、美咲は病院に備えられている公衆電話から真尋への自宅へと 電話を掛けた。 『ううん嬉しい。ありがとう。実は今ね、エステから帰ってきた帰りなの』 『そっか・・・来週ですもんね結婚式・・・・・』 真尋の言葉の端々にこれ以上ない程の幸せを感じ 美咲はそっと呟いた。 『本当にね、なんか突然すぎて全然実感ないし(笑)』 『それが幸せって言うんじゃないんですか(笑)?』 『陽一も本当突然すぎるのよね(笑)結婚なんて言ったら女性の一生に関わる問題なのにね(笑)』 『美咲ちゃん?美咲ちゃんは私よりも幸せになってね』 『・・・・真尋さん・・・・』 『ううん・・・美咲ちゃんは絶対に必ず幸せにならなきゃいけないの。美咲ちゃんには・・・幸せに なる権利がある・・・絶対にあるんだから・・・・・』 真尋の言葉に心からの温かさを感じ、美咲はいつの間にか浮かんでいた涙をそっと拭いながら 言った。 『ありがとう・・・真尋さん・・・・・』 穏やかな時間が2人の間に流れていた。 NEXT→
# by yuna-sos-0305 | 2005-12-21 20:16
『一体ど-なってんだよ!!』 そう叫びながら ふとぶつかりそうになった安岡の肩に酒井は手を掛けると言った。 『どうもこうも、まずは安岡、お前が落ち着け』 『あ・・・酒井さん・・・・・』 『・・・どうした?取り乱したりして・・・お前らしくもない。』 酒井のその言葉にゆっくりと 溜息をつきながら安岡はポツリと呟いた。 『センセがさ・・・・・』 『ん?北山がどうかしましたか?』 『真尋ちゃんと結婚するんだって。』 突然の安岡の言葉に 酒井は驚きの表情を浮かべたまま言った。 『は?真尋さんと・・・?いつ?』 『今月だって。何でも昨日のデ-ト中に決めたらしいよ。っていうか黒ポンもセンセも何で 急に結婚なの?あ~あ・・・ったくみんなして結婚、結婚って・・・・』 安岡の言葉もそこそこに酒井がスタジオの中へと入っていくとそこにはいつもと変わらない北山の姿があった。 『北山・・・・・』 『ああ・・雄二・・・今、トラックダウンしてたとこなんだ』 北山が浮かべる笑顔を見つめながら、酒井はそっと呟いた。 『・・・・・本当なのか・・・・?』 『・・・え・・・?』 『その・・・・・真尋さんと結婚するってこと・・・・・・』 酒井の言葉に 北山は驚いた表情を浮かべたが、すぐに落ち着いた表情になると ゆっくりと話し始めた。 『ごめん・・・驚かせて・・・でも、真尋のことこれ以上放っておくこともできないからさ・・・』 『・・・・・そうか・・・・』 『もう何年になる?』 『4年・・・・かな・・・・』 『喜んでただろ、真尋さん・・・・』 『・・・・・・うん・・・・・』 『・・・・・そうか・・・・・・幸せにしてやれよ・・・・』 『分ってる。』 ゆっくりと けれど確かな声で北山は答えた。 これ以上ない程の笑顔だった。 *************************** 『黒沢さんの前に北山さんが?』 『そう!あいにく前、越されちゃってね~参ったよ(笑)』 屈託のない笑顔を浮かべながら 黒沢は 北山の一件を、病室に居る美咲に語っていた。 『でも安岡の奴、怒ってたぞ~。“センセも黒ポンも自分には何の相談もしてくれないで勝手 すぎる“って。』 笑いながら 話す酒井の言葉に 黒沢は言った。 『要するに安岡の奴、かまってもらいたいんだよね。3人兄弟の末っ子で、俺達の中でも1番 年下だから自分が知らないところで物事が進むのは嫌なんだよね、結局。・・・ったくとんだおぼっちゃまだよ・・・あいつは・・・・』 『・・・・・・・・・・・』 『・・・・・・なんかいつもの黒沢さんじゃないみたい・・・・・』 ポツリと呟いた美咲の言葉に共鳴するように 続けて酒井が呟く。 『ああ・・・俺もそう感じた・・・・・・』 『なんだよ・・・2人してそんな目で俺のこと見て・・・』 酒井と美咲の視線を感じたのか、黒沢がそっと言った。 『いや、すまん、すまん(笑)・・・あ・・・時間大丈夫か?』 黒沢の肩を叩きながら、酒井は思いだしたように言った。 『っと・・・・そろそろかな・・・・』 腕時計で時間を確認すると、黒沢はベットにいる美咲へと優しく笑顔を向けた。 『それじゃあ、美咲ちゃんまたね。今度来るときは新曲持ってくるからさ。』 『はい、楽しみにしてます。』 ウインクをしながら病室を出ていく黒沢の姿を、美咲はそっと見守っていた。 ************ その日、遅い夕食を片手に酒井がスタジオへと戻ったのは8時を過ぎてからだった。 『悪い、遅くなった』 そう言ってソファ-に腰を下ろそうとした酒井の前に村上が1冊の雑誌を投げ出した。 『見ろよ・・・』 『何です?』 コンビニの袋を片手に持ったまま酒井が目にしたその雑誌は本来なら恋人である美咲 が表紙を飾るはずの雑誌だった。 『こうしてる間にもライバルに取られちまうぜ』 『・・・・こればかりは仕方ないです・・・・』 小さく呟いて、酒井がサンドイッチに手を伸ばした次の瞬間 『お前!!悔しくねぇのかよ!?』 そう言って村上は酒井を壁に押しやった。 『・・・・・・っつ・・・・・・』 『リ-ダ-!!』 突然の出来事に、北山が声を上げた。 『お前、悔しくねぇのかよ?美咲が病気でいる間にも美咲の居場所がなくなっちまうんだぜ?お前・・・それでもいいのかよ?』 計り知れない その強い力で酒井を壁に押し付けたまま 村上は強く酒井を睨んだ。 『・・・やしくない・・・・』 『あ?なんだよ?聞こえねぇよ・・』 『悔しくない訳ないでしょう?本当なら俺だって・・・俺だって・・早く元気になってこの表紙を美咲に笑顔で飾って欲しいですよ!!!でもそれができないから・・・ こうやって俺だって・・・美咲だって苦しんでるんです!!!』 『・・・美咲だって・・・必死に戦ってるんです・・・・』 酒井のその言葉を聞いた 村上は ゆっくりと酒井の首元から腕を放すと ポツリと呟いた。 『・・・・・すまなかった・・・・・』 『ちょっと煙草吸ってくるわ・・・・』 そう言って村上はスタジオを出て行った。 酒井はそんな村上を見送るとゆっくりとソファ-に腰を下ろした。 『・・・大丈夫?』 北山が心配そうな声で声を掛ける。 『ああ・・・・・・』 『止められなくてゴメン・・・』 そう呟くと 謝罪のようにゆっくりと瞼を伏せた。 『いや・・別にいいよ・・・あいつも・・村上も1人でいろいろ抱えこむところ あるからさ・・・・・』 『うん・・・でも悪気じゃないと思う・・・リ-ダ-も・・・』 『分ってる』 そっと返事を返しながら、酒井は小さく微笑んだ。 同じ仲間として、村上の不器用さは何よりも理解しているつもりだ。 相手のことを想うがあまり、時として心ない言葉を発してしまうと。 優しすぎる故の、結果なのだと・・・。 『そういえばさ、香織さんがお弁当作ってきてくれたんだ』 コ-ヒ-を愛用のマグカップに注ぎながら北山が言った。 『お弁当?』 『うん、サラダとス-プとパスタ。たぶん黒ポンにレコ-ディングで缶詰めに なってること聞いたんじゃない?昼間持ってきてくれたんだよね。』 『そうか・・・・』 つい今しがたコンビニで買ってきたばかりの、サンドイッチをチラリと横目で 見つめながら酒井はそっと呟いた。 『冷蔵庫に入れてあるんだけど、ヤス今、仮眠してるし・・食べる?』 何年経っても変わることのない、北山らしい心配りに 心からの感謝を感じながら、酒井は微笑みを返し言った。 『せっかくですし・・・ありがたく頂きます。』 ************************** 『そういや最近見かけなくなったんだよな~』 『何が?』 『ほら・・VOGUEの表紙、毎月飾ってた美咲!』 『美咲?』 『お前知らねぇの?顔もスタイルもメチャクチャ抜群でさ、笑顔がすっげぇカワイイんだよ。・・え~とたしか・・・あ、そうそう水野美咲って言うんだよ』 『・・・水野・・・美咲・・・・・?』
# by yuna-sos-0305 | 2005-12-20 21:11
「プリンなんて久しぶり~」 そう言って安岡は美味しそうにプリンを口に運んでゆく。 美咲が入院して2週間 仕事の合間を見ては美咲の元へ通うようになった酒井はメンバーである村上達にせめてもの礼として美咲が足しげく通っていた店のプリンをみやげとして買っていくようになった。 「で、美咲の様子はどうなんだよ?」 プリンを食べ終えた村上は開口一番酒井にそう 切りだした。 酒井は小さく溜息をつくとポツリ、ポツリ話し始めた。 「まだわからないらしいんです・・今回倒れた原因が持病の心臓病と関係あるのか・・・」 「お前・・・時限爆弾持ってるようなもんだな・・・」 「とにかく高坂先生の話ではしばらくの間、様子を見るそうなのでしばらくの間、お願いします」 そう言って酒井はメンバーに頭を下げた。 ************************************ 酒井が帰り支度をしていると黒沢が寄ってきた 「…ごめんな…」 「…え…?」 「美咲ちゃんがこんな風になった時に・・北山から・・聴いただろ?・・」 「ええ・・良かったじゃないですか」 そう言って酒井は優しく笑顔を浮かべた。 「酒井・・・俺、延ばすよ」 「延ばすって・・・」 「香織との結婚。やっぱり美咲ちゃんにも元気になって出席してもらいたいからさ」 「黒ポン・・・」 「ん?」 「黒ポンの気持ちは嬉しいですけど俺は正直、仲間だからこそ黒ポンの好意に甘える事は できません」 黒沢を見つめ、酒井はゆっくりとけれど確かに自分の気持ちを口にした。 「酒井・・・」 「それに黒ポンと香織さんの幸せ・・邪魔する事は・・・邪魔する権利・・俺にはありませんから・・・」 「そっか・・なんかバカだな俺・・1人で突っ走って・・・」 そう言って小さく笑う 黒沢を見つめながら酒井はそっと呟いた。 ![]() 「でも俺は・・美咲のために何かできてるんでしょうか・・・」 「え・・・?」 「あいつは・・美咲はいつだったか言ってくれたんです。“雄二のためなら全てを投げ売ってもいいって・・雄二のためなら・・命・・この命さえも惜しくないって・・そう言ってくれたんです・・・」 「カッコいいじゃん、美咲ちゃん」 酒井を見つめ黒沢は言った。 「今頃気付いたんですか?なんてたって美咲はVOGUEの専属モデル・・・」 「あ~はいはい。分かったから少し落ち着いて。って・・いつもならこれ俺がみんなに言われてるセリフだよ(笑)」 「ですね(笑)」 「でさ、話戻すけど美咲ちゃん、当分復帰は望めない状況なの?」 「入院が長びけば・・・・」 「そっか・・・・」 「モデルの世界も体力勝負ってところがありますからね・・・」 「美咲ちゃん、仕事のことは何て言ってる?」 「今のところは特に何も・・・・」 「早く良くなるといいな・・・・」 「ええ・・・・」 ******** 『元気だった?』 『元気だったよ。真尋は?元気だった?』 『元気!って言いたいところだけど・・・』 そう言って真尋は上目づかいに北山を見つめた。 日曜日、久しぶりのオフをもらった北山は恋人・真尋を誘い 家族連れで賑わう水族館に来ていた。 『何かあった?』 心地よい風に吹かれながら北山は訊いた。 『・・・・・元気じゃなかった・・・・元気でいようと思ったけど・・・陽一と会えるから頑張ろうってそう・・・思ったけど・・・寂しくて・・・・』 真尋の言葉を聞き終わらないうちに北山は真尋を抱き締めていた。 『・・・・・・陽一・・・・?』 『・・・ごめん・・・・』 『え・・・・・?』 『俺のせいで・・こんな寂しい思いさせて・・・本当にゴメン・・・』 『・・・・・・』 『バカ・・・何で謝るのよ・・・どうして謝るの?こんなの・・・いつものことじゃない・・・』 真尋の髪を撫でていた北山は真尋を更につよく抱き締めると耳元でそっと囁いた。 『・・・・今夜は真尋のことずっと感じていたい・・・・・』 ****************** 『藤谷香織がお送りしてますmidnight express 今夜もたくさんのFAX、お葉書、そしてメ-ルありがとうございました』 『お疲れさまでした~』 『おつかれ~っていうか来てるよ、噂の彼が(笑)』 『えっ?』 ディレクタ-の言葉に香織が驚いて顔を上げると そこには笑顔で手を振る黒沢の姿があった。 **************** 『もうビックリした~』 『ごめん、ごめん(笑)珍しく仕事が早く終わってボ-ッとしてたらなんか香織の顔が見たくなってさ』 『ありがと・・・(笑)で?こんな時間に今からどこに行くの?』 そう言って香織はハンドルを握る黒沢を見つめながら訊いた。 『・・・美咲ちゃんのところ』 『え・・?』 『酒井がさ、最近元気ないんだ・・・・まぁ無理するなって言うと酒井は余計に 頑張っちゃうやつだからさ・・・酒井の奴、美咲ちゃんの事でいつも悩んでるから・・・付き合って5年だろ?もうそろそろ結婚考えたっていいのにさ・・・やっぱり自分がいつも傍にいてやれない事に不満感じてるみたいでさ・・・』 『・・・・』 『あいつはさ・・・酒井はすごくいい奴だし、2人とも俺達のことすごい応援して くれただろ?だから恩返ししたいんだ・・あいつに・・・酒井に心から笑ってほしい・・・・』 『・・・薫・・・・』 初夏の風がそっと頬を撫でていった 静かな夜の闇に 溢れそうな想いが零れ落ちていた。 ************** 『ん・・・・?』 『あ・・ごめん・・起こしちゃった?』 『ううん・・・』 『なんかさ・・・・』 『うん・・・?』 『やっぱり綺麗だな~って思ってさ・・』 そう言って自分を見つめる北山を優しく見つめ返すと 真尋は言った。 『そういう陽一もまた随分、お世辞が上手になったわね(笑)』 『・・・・』 『う~そ。嬉しかった・・ありがと。』 無邪気に笑う真尋の姿を見つめていた北山はいつの間にか その言葉を発していた。 『真尋・・・』 『ん?』 『・・・・結婚してくれないか・・・・?』 『・・・・陽一・・・・・』 時を刻む時計の針の音だけが静かな部屋に響いていた・・・。 NEXT→ # by yuna-sos-0305 | 2005-12-07 21:39
7月も半ばに入った頃、 レコーディングに励む酒井の元に一本の電話が入った。 「なにかあったの?」 片手に携帯を持ったまま電話から戻ってきた酒井に北山が聴いた。 「美咲が・・美咲の奴がまた入院したらしいんです・・まぁいつもの事ですよ・・」 そう言って酒井は弱々しい笑顔を浮かべた。 「リーダーには?」 「まだです。ちょっと言ってきます」 そう言って部屋を出ていく瞬間、ポツリと呟いた。 「・・この間は何ともなかったのになぁ・・・」 酒井が出ていったのを確認すると北山は小さく溜息をついた。 「自分を責めるなって・・・言ってるのに・・」 一目惚れだった。その笑顔を見た瞬間、恋に落ちていた。村上や安岡からからかわれながらも、慎重にゆっくりと交際を深め、気がつけば付き合いは6年に渡っていた。 車を走らせながら、彼女を初めて抱いた夜のことを思い出していた。 長い口付けの後、彼女が言った。 「・・・私、心臓病なの・・・」と微かな 消えゆく声で。 秘密を打ち明けた後の彼女の瞳は不安げに揺れていた。 けれど心を決めて 言った。 「心臓病であろうと・・何であろうと・・もう俺は、あなたを愛してしまったから・・あなたしかいないと・・感じたから何があっても・・一生俺が守っていきます・・」 いつ消えるかもしれない燈を消さないようにと 最前の注意を払いながら 気付けば彼女と過ごす6度目の夏がもうすぐ目の前にまでやってきていた。 通い慣れた道を曲がればそこには彼女が人生の半分を 過ごしている病院がそびえたっていた。 「あの・・今日、緊急入院した神崎美咲は・・」 そう言ってナ-スステ-ションに声を掛けると奥にいた看護婦が笑顔を浮かべ、教えてくれた。 「神崎さんなら、5階の503号室ですよ」 静かな廊下をゆっくりと歩く。そして神崎美咲 と書かれたプレートが ゆっくりと酒井の視界の中に入ってきた。 もう何度目になるのか それが数えきれない程、 美咲が病院で過ごす日々は自然と増えていた。 恋人ならば 一度は思うこと。“自分の心臓と 取り替えてあげられたら”そんな事も思った。 「何で心臓病なんて病気持ってる奴がトップモデルなんか勤まるわけ?」 ただ病気というだけで 影口を叩く、どこぞの業界男を怒りに任せて、 殴り倒した事もあった。 全ては彼女を思ってのこと。彼女が傍にいればこそだ。けれど もし 自分の前から美咲がいなくなったら・・?そう思うと不安でならなかった。 不安なんてものは、どんな時でもつきまとう。 姿勢を正し、ゆっくりと扉を叩く。 「どうぞ。」 その彼女の声に導かれるように酒井はゆっくりと 部屋の中へと入っていった。 「雄二・・・」 予想以上の顔色の良さにホッと息をつく。 「高坂さんから聞いてさ」 俺のその言葉に 「だと思った。高坂先生いっつも連絡早いんだもん」 少し唇を尖らせて、小さく笑みを浮かべる。 ピンクの室内着に貫けるような透明な白い肌。 どんな時でも、確実に俺を戸惑わせ、悩ませてきたその白い彼女の肌。 初めて口付けた時の その肌の冷たさまで昨夜の事のように蘇る。 「さてと・・今回は何日ぐらいだって?」 ベットの脇に無造作に置いてあった椅子に腰掛け 訊ねる。 「2週間ぐらいかな・・?検査によるって」 涼しい顔でそう言ってのける。 不安なんて言葉をまるで知らないように。 「そんな心配そうな顔しないでよ。消えていなくなる訳じゃないんだから」 俺の心の内を読み取るようにそう言って小さく笑う。 その胸の内を襲う、暗闇がどんなものか知らないままに 時として彼女を傷つけてしまう。浅はかで、無防備で無邪気な言葉によって。 今の俺は彼女の存在によって生かされてるようなものだ。彼女のために詞を書き続け、気が付けば彼女の言葉ひとつで、これ以上ない程の喜びを感じている自分がいる。その一方で仮に彼女、美咲という名の電池が切れたらそれで終わり。きっと俺の人生は今まで以上につまらないものになるだろう。 「どうしたの?難しい顔しちゃって」 気が付けばそこには美咲の笑顔があった。 「・・あ・・いや・・その・・」 言葉に詰まる俺を見つめながら美咲は 小さく笑うと額の中央を指差し、 「眉間にシワ寄ってたよ?」 屈託のない笑顔で笑った。 そしてそんな美咲を見つめながら、何があっても彼女だけは失えない、と改めて実感する。 ********************** コーヒー片手に曲のプロムラミングをしているとひょっこりと顔を現したのは安岡だった。 「どう?進んでる?」 部屋の中を見渡しながら尋ねる。 「まぁまぁってところかな」 コーヒーを啜り、来客である彼のために新しい紙コップを手に取る。コーヒーメーカのスイッチを入れればコーヒーの香ばしい香りとコポコポという音が部屋に響き渡る。 「リーダーは?」 テーブルに置いてあった雑誌をパラパラとめくりながら聞いた。 「結真ちゃんち。ランチ作って待っててくれてるんだって、あの2人も本当ラブラブだよね~」 そう言って、同じように雑誌のページをめくっていた安岡がふと目を止めたのは、まるで主人の存在を示すかのようにテーブルやソファーにちりばめられた彼の持ち物。飲みかけのコーヒーや、書きかけの歌詞と鉛筆。気に入りのジャケットに彼が長年愛用しているショルダーバックまで。全て彼の存在と原型を残したまま、主人の帰りを待っている。 それらの荷物を眺めながら北山は小さくため息をつくと言った。 「・・美咲さんがまた入院したらしいんですよ・・・」 「それで取るものもとりあえずって感じで・・」 納得したように安岡が頷く。 「そういえばあのショルダーバックも美咲がくれたんだってすっごい喜んでたんだよね・・・酒井さん少しは相談してくれたっていいのにさ・・ぜんぜん話してくれないんだもんな~」 そう言って小さくため息をつく。 そんな安岡を見つめながら北山は出来上がったコーヒーを紙コップに注ぎながら言った。 「雄二の事だからきっと遠慮してるんじゃないんですかね?」 立ち上る湯気が香りを運び、香ばしいコーヒーの香りが鼻を掠める。 「だいたいさ、酒井さんの場合は遠慮し過ぎなんだよ。ったく・・俺たちのこと何の役にも立たないでくのぼうって思ってるんじゃない?失礼しちゃうよね、本当にさ」 そう言って彼がクッションに込めたパンチが酒井に届いたかどうかは分からないが。 「まったくもう・・・何年、仲間やってると思ってるんだか・・・・」 そう呟いて、安岡がコ-ヒ-を口にした次の瞬間、 「やっと見つけたよ~。何で何も言わないでいなくなるんだよ~。心配するじゃんか~。」 メンバ-の中でも、いつも幸せそうな彼がやってきた。 「大げさなんだってば、黒ポンは~。」 笑いながら 安岡は 彼がここまで自分を捜しに来た原因を口にした。 「で、今度はなに?またPCでも動かなくなった?」 「違うってば!!もう、いくらドジな俺だって、そう毎回、毎回同じ事は繰り返さないよ!」 予想外の彼の言葉に驚きながら 「じゃあ、なに?またすっごい美味いカレ-の店でも見つけた?」 そんな安岡にやれやれと溜息をつきながら、 次の会話を進めるべく、北山が聞いた。 「何かあったんですか?」 「うん・・・実はさ、香織と結婚しようと思ってさ・・・」 その言葉に北山の表情が、途端に明るくなる。 「良かったじゃないですか。式は?」 「今、いろいろと探してる途中なんだけど、再来月にしようかなって・・・まぁ、まだ準備段階だけど、とりあえず報告だけはしておこうと思ってさ・・・」 そう言って嬉しそうに微笑む黒沢を穏やかな表情で見守る、北山に対し 安岡は何も言葉を発することなく ただ黙ってそんな2人を見つめていた。 ********* 「また明日来ますからね・・・」 既に眠りについている、彼女の柔らかな髪をそっと撫でながら そう呟いてゆっくりと 椅子から立ち上がる。 ついさっきまでの彼女の笑顔を思い浮かべ、彼女は大丈夫だ、と自分に言い聞かせる。 病院を出た、酒井の視界に1人の男の姿が映った。 「リ-ダ-・・・・・」 「よぉ・・・・・・・」 自分は 美咲だけでなく この男にも 幾度となく 救われてきたと そして いつも 支えられていると、酒井は改めて感じていた・・・・。 NEXT→ ![]() # by yuna-sos-0305 | 2005-11-30 20:46
「ちょ・・・・待って・・・・・・・」 性急な口付けと 服の中に忍び込んできた その手に なすすべもなく 呟く。 「・・・・・やっぱり止める・・・・・?」 そう言って 静かにその手を止める。 あなたを拒めないことなど あなたが一番知っているハズなのに ほのかな灯りに 照らされた あなたの顔は とても優しげで そのギャップに ふと戸惑ってしまう。 「・・・・・・・・・・っつ・・・・・・・・!」 こみ上げた涙もそのままに 彼に抱きついて 消え入りそうな声で 囁く。 「・・・・・・・・拒めないの・・・分かってるくせに・・・・・・」 その言葉に納得したように ふと笑顔を見せる彼。 「・・・・・・うん・・・分かってるよ・・・・・・・・・」 彼を何にたとえることができるだろう いくら食べても食べ飽きない 甘いスイ-ツ? それとも一度手を出したら 止められなくなる媚薬・・? 答えは どちらでもない。 なぜならば 彼の存在自体が 私にとっては 甘い罠のようなものだから 一度はまったら、抜け出せない けれど極上な 甘さを体験できる 甘い罠 そのものだから・・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・あっ・・・・・んっ・・・・・」 「・・・・・・・・・・愛してるよ・・・・真尋・・・・・・」 耳元で 少し掠れた声で彼が甘く囁けば 幾度となく 私は 甘い罠へと堕ちていく・・・・・・・ あなたという 深い 深い 抜け出すことのできない 甘い罠に・・・。 I know your love in this trap・・・・ ![]() ![]() 私は彼のマンションで 数え切れないほどの写真に 目を奪われていた。 「コ-ヒ-ブラックでいいよね~?」 キッチンに立っている 彼が そう言って声を掛けてくれる。 「うん、いいよ~」 そう言って返事を返しながら 次から次へと出てくる写真に目を通す。 「はい、コ-ヒ-」 コ-ヒ-が入ったマグカップをゆっくりと置いてくれる。 「ねぇ、優っていったいどれぐらい写真撮ってるの?」 そう言って 彼を見つめる。 「う~ん・・・どれぐらいかなぁ・・・。撮れる時は、撮れるだけ撮っちゃうから よくわかんないや(笑)」 そう言って 笑う 彼の声を聴きながら 私は一枚の写真を見つけた。 「これ・・・・・・」 「どうしたの?何かいい写真でもあった?」 そう言って 覗き込んでくる彼に 1枚の写真を見せた。 「この写真、可愛いね」 彼が見つめる 視線の先には まだ20歳を迎えたばかりの デビュ-当時の彼の初々しい姿があった。 それまでの 軽快さをなくし 途端にスロ-ダウンしていく 彼の言葉 そして 写真を見つめ続ける私に 彼はコ-ヒ-を啜るとゆっくりと呟いた。 「カメラマンの人がくれたんだよ。記念にどうぞって・・・」 そう言って そっと10年前の姿に 微笑んだ。 そんな 彼を見つめながら 私は そっと呟いた。 「写真って素敵だね・・・・たとえ、その時の相手のことを知らなくても 時間も場所も関係なしに優の10年前をこうやって教えてくれる・・・・ 10年前の今日はこんなことがあったんだって・・優の人生の一部分を 垣間見ることができる・・・それって何よりも幸せなことだよね・・」 「・・・確かに10年前は別々の人生を生きてたけど・・・これからは・・・ ずっと一緒だから・・・・」 「優・・・・」 その 真っ直ぐな 瞳に 吸いこまれそうになる 「僕が笑う、その先で美尋の笑顔をずっと・・見ていたいんだ・・・」 そう呟きながら、頬に触れる。 彼の手に 自分の手を重ね ありのままの 想いをそっと呟く。 心のままに。 「私も・・私も優とずっと一緒に生きていきたい・・・」 そう呟けば 「今の言葉、確かに聴いたからね(笑)?」 そう言って 笑いながら 「じゃあ・・誓いのキス・・・」 そっと唇を重ね合う。 10年前の 想いと 10年後の想いが 交わり、重なり合って 「今」になる。 あなたと描く 未来写真はどんな景色を映し出すのだろうか? そんなことを思いながら 彼の腕の中 そっと呟いた。 『10年前の優も好きだけど・・・・・・・なにより今の優が1番好き・・・・』 『僕も、今の美尋が・・・大好きだよ・・・・・』 2人の想いが重なり合って 今 新しい未来写真が生まれる・・・・。 fin # by yuna-sos-0305 | 2005-11-28 21:46
いつまでもずっと一緒だと思っていた。 2人の未来に何の疑いを持つこともなく ただ信じていた 彼と過ごす“今日“という日々を・・・・ ***************************** 彼が突然姿を消してから 1年。 いつも彼の明るい声で満たされていた部屋は急に静まりかえりそれがより一層 彼の不在を 彼がもういないことを物語っていた。 1年前 『ごめん』 ただその一言 小さなメモを残し 彼は突然姿を消した。 理由は分からない。なぜ、何の相談もなく、出ていったのか・・・・ 考えれば とめどなく想いが溢れそうで 考えることをあえて自制した。 今では当たり前のように ただ静かな時間が流れていくこの部屋で 彼への想いを断ち切れる勇気もないままに、ただ時間だけが過ぎていく 金色の小さなクマがついたこの部屋の合鍵も 彼がこの部屋から姿を消した日、メモと一緒に置いていったものだ。 もう必要ない、とそう思っていても なぜか捨てられずにそのままで居た。 ぼんやりと合鍵を見つめながら もう朧気にしか思い出せなくなってしまった彼の笑顔。 そっと瞳を閉じて 瞼に思い浮かべてみる。 どうして こんなにも あの人は 輝いているのだろう そう感じた瞬間、涙が頬を伝っていた。 “寂しさ“という 感情も忘れかけていた 彼を失ってからは 『・・・・・・・・てつ・・・・・てっちゃん・・・・・・』 けれど こんなにも 彼は私の中で鮮やかに 生きている この感情をどう表現すればいいのだろう・・・・・・ 『・・・・・・・・・てっちゃん・・・・・・・・・・・・・いたい・・・・・・・会いたいよ・・・・・・・・』 涙と共に それまで心の奥底に閉じこめていた感情がゆっくりと蘇る。 『・・・・・・てっちゃん・・・・・・・・・・・』 彼を失った あの日のように 彼を渇望する心が 気持ちが 自分の中でゆっくりと目覚めていく。 『なんで・・・・・・・なんでいなくなっちゃったの・・・・・?なんで・・・・・私に何も言わずに いなくなるのよ・・・・・・・・・・・』 もう一度 彼に会いたい 『ずっと一緒だって・・・・・ずっと一緒にいるって・・・約束したじゃない!!!お前の傍で お前をずっと守っていくって誓ってくれたじゃない!!!!』 願いとも 祈りとも つかない この願望を どう表現すればいいのだろう・・・・・・・・・ 『どうしてよっ!!!!!!!!!!どうしておいてっちゃうの・・・・・・・・・てっちゃんがいないと 私はどうしていいか分からないのに・・・・・・・・・・・・・・・・』 『こんなにも・・・・・・・・てっちゃんを求めてるのに・・・・・・・・・・・』 次の瞬間だった ふわりと、何かに包まれた気がして 背中に 暖かなものを感じて 失ったハズの確かな重みを感じて ゆっくりと振り向けば 『・・・・・・・・・ごめんな・・・・・・?』 そこには彼の姿があった。 1年前、私の元から姿を消した 彼の姿がそこにはあった。 『・・・・・・・・てっちゃん・・・・・・・・・・やだ・・・・・・夢見てるのかな・・・・私・・・・・』 そう呟くと 彼は小さく笑って その大きな手でゆっくりと髪を撫でてくれた。 『・・・・・お前が俺のこと、夢だ、ってそう思うのもムリないよな・・・・それだけ俺はお前のこと 放っておいた訳だし・・・・・1人にさせてた訳だし・・・・・・・・』 『・・・・・・・・・・・・・・』 『許してほしい、って言うんじゃねぇんだ・・・・お前の前から、何も言わないで姿を消したこと・・・ 本当にすまなかったって・・・・悪かったって・・・・そう思うから・・・・・・でもこの1年、お前が 傍にいないことで何よりお前が大切だったんだ、って・・・・そう感じたから・・・・・・だから・・・・ 戻ってきた・・・・・もうお前がここにいないってコト、覚悟して来たんだよ・・・・そしたら・・・・ 何も変わって無くて・・・・1年前と何も変わって無くて・・・・・・それがすごく嬉しかった・・・ お前が少しでも俺のこと待っててくれたって・・・・そう思ったら嬉しくて・・・・・・・』 そう言って 言葉を切ると ゆっくりと私を抱き締めた。 『・・・・・・・・ごめんな・・・・・淋しい想いさせて・・・・辛い思いさせて・・・本当にごめんな・・・』 『・・・・・・別に・・・てっちゃんのこと待ってた訳じゃないから・・・・・・・・』 本当は待っていたと、言いたいのに 『・・・・ああ・・・・・・・』 『マンションだって・・・・引っ越すのが面倒なだけで・・・・・・・・』 あなたがいつ帰ってきてもいいように ここから1歩も動く気はなかったと そう言いたいのに 『・・・・・・・・分かってる・・・・・・・・・』 『てっちゃんなんか・・・・・・・もう・・・・・・・知ら・・・・・・ない・・・・・・・・・』 そう呟いた瞬間、涙がゆっくりと零れ落ちた。 『・・・・・・・・・・・お前の・・・・・その涙だけで俺は満足だ・・・・・・・・・・』 『・・・・・・・・・・・・バカ・・・・・・・・・・。』 これ以上ないほどに 強く抱きしめられ 私は幸せを感じていた。 1度失ったものは 2度とは帰らないと 言うけれど だとしたらこれは奇跡なのだろうか・・・・・・・・? 『また一からやり直そうぜ・・・・・・やっぱ俺にはお前が必要なんだよな・・・・・・・』 『愛してる・・・・・もう絶対・・・・離さねぇから・・・・・・・・』 『・・・・・・・・・・・うん・・・・・・私も・・・・愛してる・・・・・・・・・』 『てっちゃん・・・・・・?』 『ん?』 『迎えに来てくれてありがと・・・・・・』 『バ-カ(笑)』』 奇跡でも 偶然でもなんでもいい 今はただ この幸せに この運命の出逢いに心から感謝したい 心からそう思う。 もう一度 ここから2人で始めてみよう あなたとならば どんなことも越えていける そして これから あなたと見る景色はこのうえなく最高のものだと そう思うから 2人で また季節を越えていこう・・・・・・・ # by yuna-sos-0305 | 2005-11-26 11:57
『へぇ~薫って、こんな風に想ってくれてたんだ~?』 『そうだよ、もう完璧一目惚れだったんだから!連絡が来るまで香織は俺のことどう思ってるんだろう・・?ってもうそればっかりでさ・・・(笑)』 お互いの 左手の薬指に輝くマリッジリング。 今では遠い出来事のように思える出逢いの日々を、ひとつのラブスト-リ-として 詰め込んだソロアルバムの歌詞カ-ドを 時に笑いながら 時に真剣に見つめる彼女。 あれから幾つかの季節が過ぎて 僕らは夫婦となった。 出逢った時は遠い存在に思えた君が、今は手の届く距離で優しく微笑んでいる。 この現実を この日々を嬉しく感じるのと同時に その笑顔を、かけがえのない日々を守りたいと思う自分に気付く。 『薫?・・・・・・なに考えてるの・・・?』 そうさ、僕らは出逢うべくして 出逢った運命の相手なんだ。 『ん・・・・香織のこと考えてた・・・・・』 君と出会ったとき、僕は無くしたカケラを見つけたような・・・自分の欠けた一部を見つけた ような・・・そんな感覚に陥った事を今でも鮮明に覚えている。 『またまた~(笑)カレ-の事でも考えてたんじゃないの~(笑)?』 そう僕はきっと君を捜し求めていたんだ・・・心の奥底でずっと・・・・ 『違うって!香織の事、考えてたの!!』 『・・・・・・わかった、わかった(笑)』 『俺はいつだって・・・どんな時だって香織を想ってるよ?』 瞳を閉じる、その瞬間まで 君が隣にいてくれたなら どんな時も笑顔で越えていける。今、心からそう思う。 『・・・・ありがと・・・薫・・・・・。』 『・・・・うん・・・・・』 きっと ずっと そして これからも 君への想いを胸に僕は生きていくありがとう。 そしてこれからもよろしく # by yuna-sos-0305 | 2005-11-24 22:25
![]() 夢のあと ****************** 『本当にありがとうございました!!!』 興奮も 火照った体もそのままに ステ-ジから降りれば 様々な声が降り注いでくる 『お疲れさま。』 『最高だったよ』 そんな数々の言葉に 感謝を感じながら 小さく会釈を返し、 楽屋へと向かう。 『あ・・・・お疲れさま。竹内からこの後、龍庵で打ち上げですって言われたんだけど 参加する?』 ライブの疲れなど 微塵も感じさせないように 笑顔を向けてくる仲間に そっと呟く。 『・・・・悪りぃけど、今日は遠慮しとくわ・・・・。』 『・・・・・・・・・そう・・・・』 そっと呟けば 静かな静寂が広がっていく。 『正直言うと、休みたいっつ-のもあんだけど、なにより1人にさせてばかりだから よ・・・・・』 ゆっくりと微笑みを浮かべれば 『・・・・あ・・・真尋ちゃん?』 仲間が発したその名前に 『そういうこと。』 微笑み返す。 『分かった、竹内に言っとくよ』 『ありがとな。』 楽屋を出ようと ふと立ち止まり そっと振り返れば 気が付いたように呟いた。 『やっぱ俺・・・・・』 『え・・・・?』 顔を上げた 仲間と視線がぶつかり合う。 『・・・・・・黒沢・・・・お前の歌・・・好きだわ・・・・・・』 優しく微笑んで 『・・・・・・・村上・・・・・』 『じゃあな・・・・』 ゆっくりと歩き出す。 『・・・・・・ありがと!俺も・・・俺も村上の歌好きだよ!!!』 仲間の気持に 振り返らずに そのまま後ろ手に 手を振って まだライブの余韻が残る会場を後にした。 ********************** マンションに辿り着いてから 電話の1本もよこさずに来てしまったことを 少し悔やんだ。 『ま・・・いなかったら・・・しょうがねぇよな・・・』 自分に言い聞かせるように呟いて 彼女から貰った 合鍵を片手に 彼女の部屋へと向かう。 ゆっくりと立ち止まれば 見慣れた名前が そこに並んでいた。 インタ-ホンを鳴らそうと けれど すぐに思い直したように 手にしていた 合鍵をゆっくりと差し込んだ。 次の瞬間 『てっちゃん!?』 ドアが開き、普段着姿の彼女が姿を現した。 『お・・・おお・・・・』 片手をあげながら、彼女の返事に応える。 『どうしたの?何かあった?』 不安げな表情で訊いてくる 彼女 『別に・・・・・別になんにもねぇよ・・・・・』 小さく呟いて、彼女の身体を抱き寄せ、抱き締める。 『きゃっ・・・てっちゃんここ玄関・・・・・』 『・・・・・った・・・・・・・・・』 香水の かすかな甘い香りを感じながらそっと呟く。 『・・・・・・会いたかった・・・・・』 『・・・・てっちゃん・・・・・・』 ゆっくりと瞳を閉じて ただ彼女を 彼女の全てを・・・・ 気が付けば 柔らかい感触が俺を包み込んでいた。 『・・・・・・・・・・・?』 ゆっくりと瞳をあけると そこには彼女の笑顔があった。 『おかえりなさい』 優しくタオルごと 俺を包み込んで ゆっくりと微笑んだ。 ああ・・・俺はこうして いつだって 君を好きになっていく・・・・・ 君の虜になっていくんだ・・・ 願うことはただひとつ。 君の笑顔をずっと隣で見ていたい・・・・ 今 この想いを・・ 愛してる ******************** いつ いつでも傍にいて 笑顔溢れる日も 涙 こぼれる夜さえも 2人でいれば 全てを越えるから・・・・ fin # by yuna-sos-0305 | 2005-11-09 21:39
『からわれたんじゃないの(笑)~?』 そう言って笑いながら 冷たく冷えたビ-ルを口に運ぶ仲間達。 『もう!違うって!ちゃんと名前も教えてくれたんだから・・・』 仲間の言葉に頬を膨らませながら しまいこんでいた携帯をゆっくりと取り出す。 運命的とも言える、出逢いから2週間。 携帯に 彼女からの着信はまだ ない。 ***************** 『ただいま留守にしております。発信音の後、20秒以内にご用件とお名前を・・・』 『やっぱり、留守かぁ・・・・』 1人呟いて、通話ボタンを切る。 鳴る気配もない 携帯をサイドテ-ブルに置いて ベットに横になれば 取り留めのないことばかりが 浮かんでくる。 彼女にとって俺は・・・なんなんだろうか・・・・? 偶然会った男の1人・・・に過ぎないのだろうか・・・・・ 溜め息をついて、 瞼を閉じれば 軽い眠気と共に 意識は遠のいていった・・・・ *********************** どれぐらいたっただろうか 目覚めれば サイドテ-ブルの携帯が着信を告げ赤いランプが光っていた。 『あっ!』 まだ 少し残っていた眠気を払いのけるように 携帯を手に取る。 ディスプレイには 2週間前、彼女が教えてくれた名前が浮かび上がっていた。 『・・・・もしもし・・・・・』 少し上擦った声も そのままに 電話越しから聞こえてくるその音に耳を澄ます。 『・・・・夜遅くにすみません・・・・・・・』 『いえ・・・・・・・』 『お電話頂いていたのに、連絡できなくて・・申し訳ありません・・・・もし、黒沢さんさえ 良ければ少しお話ししたいんですけど・・・いいですか・・・・?』 これは運命なんだと、心が囁く。 『もちろん。僕なんかで良かったら何時まででも。』 少しずつ ゆっくりと 時間をかけて お互いを 知っていこう 『あなたなしではいられない』 そう君に きっと言わせてみせるから・・・・ 今夜はどんな話をしようか・・・・・? fin # by yuna-sos-0305 | 2005-10-24 20:51
今夜、放送予定だったPOPJAMが来週に延長になり ちょっとモノ足らない感じです・・・ラジオはかなりの本数出演してるんですけど TVの方は、先週放送された『月光音楽団』のみなので。 早く歌う、黒沢さんが見たい!と思ったり。 (と言いながら実はサカイスト/笑) 話は変わって、水曜日に発売になったデビュ-ミニアルバム。 『Love Anthem』昨日GETしてきたんですけど 1曲から8曲を通してひとつのスト-リ-仕立てになっていて アップテンポな曲からバラ-ドまで、様々な曲が収録されてるんですが ゴスペラ-ズの中でも抜群の歌唱力を誇る彼のこと、 ミニアルバムと銘打ちながら 確かなこの歌声にはさすが!と思ってしまいます。 すごく声が伸びるので、聴いていて気持ちが良いんですよね。 でもなんていうか、すごく大人的な雰囲気を持つアルバムでもあるので 夜にゆっくり じっくり部屋で聴くのもまたいいなぁ~と。 運命の出逢いから、恋が確信へと変わるまでの storyな アルバムです。 また『CDで-た』では、黒沢さん自らが曲の解説をしているので 興味がある方はそちらもどうぞ(笑) 『・・・・・もう無理なのか・・・・?』 波の音だけが響く 白い部屋でポツリと夫が呟く。 『・・・・・・・・・・・』 『・・・・・・もう駄目なのか・・?やり直せないのか?なぁ・・・俺達・・・・夫婦だろ・・・?』 必死に訴えてくるその言葉に 答えを返そうと 口を開くけれど 肝心な言葉も なにひとつ見つからないままで カラカラとした口の渇きだけを 感じる。 長い沈黙を破るように その唇から零れ出た 言葉は 『・・・・・・ごめんなさい・・・・・』 ただその一言だった。 ******************** 『酒井様・・・ですか・・・・?』 『はい。ここに泊まっていると思うんですが・・・・』 確信など ひとつもないままに ただ勘だけを頼りに見つけた一軒のホテル。 宿泊帳をパラパラと捲り、 『・・・・少々、お待ち下さいませ・・・・・』 静かな声でフロント係がそう言って フロントから姿を消すと 北山は祈るような想いで天井を見上げた。 その時だった。 『・・・・・北山?』 聞き慣れた けれど懐かしい声が耳元に響いた。 『・・・・・・・・・』 その声に導かれるように ゆっくりと 振り向けば 『・・・・・・・どうしたんだよ・・・・こんなとこまで・・・・・』 その笑顔が手の届く距離で輝いていた。 『・・・・・雄二・・・・・・・』 久しぶりに見る酒井の姿に 北山は驚きを隠せずに けれど ゆっくりと微笑みながら言った。 『雄二をね、探しに来たんだ』 ********************** 『真尋さんは・・・・?』 人数少ない喫茶店で 酒井と向き合う形で腰を下ろしながら 北山は訊いた。 『・・・・・今・・・・神崎さんと話してる・・・・』 そっと呟いて コ-ヒ-を啜る。 『神崎さんって・・・・・・・』 驚きの表情を浮かべる北山に 酒井はゆっくりと微笑みながら言った。 『昨日・・・・探しに来たんだよ・・・真尋のこと・・・・。ここは結構、奥地だから 大丈夫かと思ってたんだけど・・・・神崎さんもやっぱり必死だったみたいで いろいろ調べて・・・・まぁ・・・当然と言えば・・・当然の話だよな・・・・なにしろ俺は 神崎さんから・・・真尋を奪って・・・・幸せな家庭を壊した訳だし・・・・・・』 自嘲気味に 小さく笑う仲間の姿は これ以上ない程 心が痛むものだった。 『・・・・・そんないい方・・・やめてよ・・・・・・』 『・・・・・・・・・・・』 『確かに世間一般で見れば、雄二のした事は許されないことかも知れない・・・でもだからって・・ そんな風に自分を傷つけるのはやめなよ・・・・・こういう形になっても・・・・それでも真尋さんをここまで連れてきたのは・・・・雄二なりの決意があったからでしょ?真尋さんを幸せにしたいって・・・・自分の手で幸せにしたいっていう・・・気持ちがあったからでしょ・・・・?それに俺、`中途半端な気持ちで雄二がこういうことはしないって分かってた・・・だから・・・・たとえ後ろ指指されるようでも・・・俺は・・・俺だけは応援してあげようって・・・・・そう思ったんだ・・・・・・』 ゆっくりと立ち上がった 北山に 酒井は俯いたまま 小さく呟いた。 『・・・・・・すまん・・・・・・・・』 ******************** どれぐらい 時間が経ったのだろう 夫・圭介が去った部屋で 真尋はベットに腰掛けたまま俯いていた。 『俺・・・・諦めないからな・・・・お前のこと・・・何があっても絶対に離さないから・・・・・』 部屋を出ていくその瞬間に 夫が呟いたその一言。 その言葉が真尋の胸を締めつけていた。 『・・・・・・・傷つける・・・・だけなのに・・・・・』 気が付けば 涙がこみあげていた。 その涙がゆっくりと頬を伝ったその瞬間だった 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・動いた・・・・・』 かすかに けれど 確かに 自分の中で育っている小さな命が ゆっくりと動いたのだ。 その小さな けれど とてつもなく重い命を感じながら 真尋はそっと囁いた。 『・・・・・・・・こんなお母さんで・・・・ごめんね・・・・・でも・・・・あなたの事は何があっても・・・・ 必ず守るから・・・・・・・・・・必ず・・・・守ってみせるから・・・・・・』 失うものなんて何もないと強がってみても 本当は失えないものばかり 抱えてる 矛盾に気がつく。 失うものなんて 何もないと 強がっても あなたを愛した瞬間から 失うものを重みを そして 愛しさを感じてる # by yuna-sos-0305 | 2005-10-10 16:44
![]() そう言って 真尋はぼんやりとテレビ画面を見つめていた 紫織に声を掛けた。 『酒井さん。会いたいんでしょ?』 優しく微笑めば その表情がゆっくりと変化する。 『うん・・・・』 TV画面に視線を向ければ その彼が 満円の笑みを浮かべている。 そっと寄り添って その肩に寄り掛かる。 『真尋・・?』 不思議そうに自分を見つめる紫織に真尋はゆっくりと微笑むと言った。 『私もね、会いたい。てっちゃんに』 短い静寂の後 笑うように 紫織が囁いた。 『おんなじだね』 こんなに あなたを想っているのに どうしても届かない距離が もどかしくて 今は少しだけ 切ない・・・ # by yuna-sos-0305 | 2005-09-27 20:51
![]() そう言いながら 完全に酔いの回った仲間から 琥珀色の液体が入ったグラスを取り上げる。 「あ~っ!!なんだよ~人がせっかくいい気持ちで 飲んでるのに~!!」 そう言って頬を膨らませるのは 黒澤薫、その人である。 「悪いこといいませんから、今夜はこれぐらいに しときなさいって。ね?」 子供を宥めるように 優しく言って 取り上げたビ-ルの代わりに グラスに入った水を差し出す。 「・・・こんなに気持ちよく飲めることなんて 滅多にないのになぁ・・・・」 そう呟いて いくらか淋しそうな表情を浮かべる 黒澤に酒井はそっと微笑んで言った。 「俺達は5人でひとつでしょ?誰が欠けてもいけない。 もちろん、それはヤスやリ-ダ-だって同じことです。 でもメンバ-として、やっぱりゴスペラ-ズの歌を 歌の世界を作っているのは黒ポンと・・リ-ダ-の 何物にもかえることのできないその声だって俺は 思ってるんです。だから・・・明日またいいライブして 気持ちよくお酒が飲めるように・・今日はこれぐらいに しときましょう・・・?」 「酒井・・・・」 穏やかな空気が2人を包んでいた。 次の瞬間 「車、回してきたよ。みんなのこと乗せようか?」 そう言って車のキ-を片手に 北山が座敷へと入ってきた。 「・・・さてと・・・」 酒井の隣へと立った北山がそっと呟く。 「問題は・・この2人だな・・・」 そう言って酒井は座敷の床で完全に 酔いつぶれ 眠りについている安岡と村上を 見つめた。 # by yuna-sos-0305 | 2005-09-10 19:44
![]() 夕方、空を見てみたらすごい紅く染まっていて 思わず写真を撮ってしまいました。 って紅く 染まってる方角撮れなかったんです、木とかが邪魔で(笑) でもとても綺麗な夕焼けでした # by yuna-sos-0305 | 2005-09-07 20:50
自分の家は幼稚園を経営しているのですが 事あるごとに犬(犬の場合は迷い込んでくる事が多い) や猫が捨てられていることが多いんです。 とは言え、いくら幼稚園だからってそんなに簡単に何匹も飼えるって訳じゃないんですが・・・ (そういうイメ-ジがあるのだろうか・・・) すごい時は朝、産まれてまもない子猫が3匹紙袋に入れられて、幼稚園の砂場に 捨てられてたなんて事もありました。 (こういうのは本当に参ります・・・) で、この写真は今、自宅で飼っているルイ(♀)という三毛猫なんですが この子も最初は家の 庭先に迷い込んできたんです。でもやっぱり情が移るというか・・飼いたいなぁ~なんて思い始めて なんとか親を説得して飼い始めたんです。そしたらその後、 当時幼稚園に出入りしていた大工さんから『妊娠してる』と聞かされまして もうビックリ( ̄□ ̄;)!! 1匹だけのつもりで飼い始めたのに、また産まれる事に なったら大変だ、といろいろともめるにもめたのですが (子供が生まれても誰かに飼ってもらうことにして、家で飼うのは親だけ!とか) 結局、メスとオス一匹ずつ産みまして 現在は3匹一緒に居ます。 # by yuna-sos-0305 | 2005-09-01 20:02
勘違いほど怖いものはない。 今日、改めてこのことを実感しました。 いろいろと事情があって、自分は月に1度のペ-スで病院に診察に行ってるんですが その診察日を明日と間違えていて 何気にスケジュ-ル帳を見てみたら、明日と思っていた診察が 今日!時計を見れば既に11時を過ぎ 診察は12時半から。 車を飛ばしても30分はかかるので、大急ぎで支度をして 12時前に家を出たら まだ10分も経たないところで足止めを食らい (路上が整備中でした・・・;;) 12時半になんとか病院にはついたものの、診察予定時間1時間半もオ-バ-し やっと診察。 そしてまた次の診察に向かって 最後、診察料を払おうとしたらなんと、今日に限って現金不足・・・ (だっていつもは福沢諭吉1枚で足りてたんだもの・・・) 仕方がないので、明日再度お金を払いに来ることを約束して やっとこさ帰ってきました・・・ っていうか ちゃんと日にちを間違わずに覚えていれば もう少し余裕が持てたのに・・・・。 勘違いって・・本当・・怖いです・・・。 # by yuna-sos-0305 | 2005-08-30 19:49
待ちに待った、ゴスライブDVDを手に入れました!
1ヶ月前から予約していて、予約していたお店からは発売前日の 火曜日に携帯に入荷の連絡が入っていたのですが その日はあいにく出掛けていたために 発売当日である水曜日にお店に取りに行きました。 MCも含めた、約3時間という長丁場のライブを一切カットなしで DVD化という、ファンには涙ものの1本につきます(笑) DVDを買う前までは、MCも含めてノ-カットは無し、ということを知って 「3時間完全に見てやる!」と意気込んでいたものの 実際、DVDを手にすれば個人的に好きな曲や、気に入ったシ-ンばっかり 再生して見ているという有様・・・。 ・・・駄目じゃん・・・(汗)・・ まぁ、でもゴスには今までこれといったライブDVDなどは発売されていなかったので (アカペラ港はありますが) これでしばらくの間、生ゴスを見れなくても我慢できるかも、と思うと 嬉しい限りです。 そしてDVDの中で自分の姿を確認できた方はどれぐらい いらっしゃるんでしょうか(笑)? ちなみに私自身このライブに北山さんファンの友達と賛歌したのですが なにせ席がバックステ-ジの2階席だったので 探す気力もありません(苦笑) でも本当にライブの時って自分自身どんな表情をしてるんだろう?って すごく気になったりもして。 そういう部分では自分の姿を見つけてみたいと思ったり(笑) それにしても黒ポン、ソロデビュ-が決まり 8月も終わりを迎える今、 ゴスペラ-ズとしては 今年になってまだ1枚もCDが発売されていない ことに少々不安になったり・・・。 それとも何か考えているんでしょうか・・? 何はともあれ2005年CDリリ-スゼロ。なんてことには なりませんように・・・・(祈) 個人的な感想ですが開演前に会場に流れていた クラシック調(と言うのかな?)のゴスメドレ- 個人的にすっごく好きなんですよね。 キュ-ンさんCD化してくれないかなぁ・・・・。 お久しぶりです。 管理人の雄菜です。 ブログの方、ずっと放置っぱなしでスミマセン・・・(汗) もうひとつのサイトの方の運営に夢中になってました(汗) 酒井さん連載小説。 予定ではあと3話で完結です。って・・きちんと話がまとまれば(笑)ですが・・・ ゆっくりではありますが最後まで完結したいと思っていますので もうしばらくの間、お付き合い下さいませ。 と言ってるうちから、早くも2本目の酒井さん小説を投稿。 これももうひとつのサイトにあるBBSで何の気なしに始めたものですが ゆっくりでもここで成長させていけたらな~と思っています。 # by yuna-sos-0305 | 2005-08-20 11:43
波の音に 包まれながら どれぐらい経ったのだろう 真尋の夫である圭介と酒井は しばらくの間 小さなテ-ブルを挟んだ形で 向き合っていた。 ただ何を話すわけでもなく お互いをじっと 見つめていた。 「・・・・・いつかこうなるだろうって・・・心のどこかで思ってました・・・俺達の取った行動が そう容易く受け入れられるハズはないって・・・・・」 目の前に居る 圭介を見つめながら 酒井は小さく呟いた。 「・・・・だから・・・ちゃんとケジメをつけるべきだって思ってます・・・・・」 夫である圭介と酒井が 向き合っているのを 真尋は複雑な気持ちで眺めながら ひとつ小さな溜め息をつくと そっとその瞼を伏せた。 「・・・・・・ケジメですか・・・・・・」 圭介は小さく呟くと ゆっくりと息を吐きだし 目の前に広がる海を見つめた。 「・・・・・・・真尋があなたといなくなってから・・・・ずっと考えてました・・・・俺は何のために 結婚したんだろうって・・・・・考えて・・・考えて・・・・考えました・・・・・・・・でも・・・・真尋が こうして俺の前から姿を消したのは・・・俺に対して・・・・いや・・・俺との結婚生活に対して 何か言いたかった事があるんじゃないのかって・・・・そう思ったんですよ・・・・・ それに仕事と言いながら、この数年間真尋とずっと夫婦らしい会話もなかった・・・・・ ただ・・・良識のある真面目な夫を演じることに・・・・それだけに捕らわれていた・・・・ 真尋が何を考え、何を感じてるのかさえ無関心でした・・・・・でも・・・・・だからと言って 俺は・・・・・・あなたに真尋を奪われるために真尋と結婚したんじゃない!!!!!! 彼女となら・・・幸せな生活が送れると思って・・・・例え・・自分に何もなかったとしても 彼女となら幸せに生きていける・・・・・そう思って・・・・・結婚したんです!!!!! ただ五年間・・・・夫婦でいた訳じゃない・・・・少しずつだけど・・・・酒井さん・・・・・あなたよりも 毎日時間をかけて・・・・・築いてきたものがあるんです!!!!!!!!」 激しくテ-ブルを叩き、立ち上がった圭介は 目の前に座っていた 酒井を強く睨んだ。 ********************************** 真夏の陽射しが 燦々と照りつける中 北山は小さな喫茶店に入っていた。 注文したアイスコ-ヒ-で渇いた喉を潤しながら テ-ブルの上に 大きく地図を広げる。 「・・・・・それらしいホテルは・・・・ないな・・・・・・」 小さく呟いて 顔を上げた次の瞬間 「泊まるところでも探してるの?」 この店のマスタ-らしき人物が笑顔を浮かべ立っていた。 「・・・え・・・あ・・・・ちょっと人を捜してて・・・それらしいホテルを探してるんですけど・・・」 北山がそう言うと 「この辺は、海があるから夏は観光客が多いけど、それらしいホテルって言ったら この海岸から歩いて10分の所だね。」 自分でも気づかないうちに 北山は叫んでいた。 「それ・・本当ですか?」 ******************** 「夫婦ってさ・・・なんなんだろうね・・・」 試行錯誤の中、曲作りをしていた黒沢の背中を見つめながら 安岡はポツリと呟いた。 「・・・・・どうしたの・・・?」 そう言って 自分を見つめる黒沢の視線を感じながら 安岡はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた 「・・・真尋さんが・・・酒井さんといなくなったのは・・・何か物足りなかった からじゃないのかなって・・・・・・」 「・・・・・・」 「だってさ、結婚生活に満足してたら夫以外の男といなくなったりしないでしょ? だから・・・真尋さんが酒井さんといなくなったのは・・・何かを・・結婚生活には ない何かを求めてたのかなって・・・そう・・思ってさ・・・」 短い沈黙の後 黒沢は手にしていたペンをゆっくりと置くと そっと微笑みながら言った。 「・・・・幸せは・・目には見えない物だから・・だから余計探したくなるんじゃ ないかな・・・?人間っていうのは・・・」 「目には見えないかぁ・・・・」 黒沢が口にしたその言葉を呟くと 安岡は窓の外の景色をぼんやりと見つめた。 酒井が姿を消してから1ヶ月半。 本格的な夏が 始まろうとしていた・・・ NEXT→ ![]() # by yuna-sos-0305 | 2005-08-20 11:28
本音を言えば 会いたい・・ 一言でも声が聴きたい・・ こんな私の想い 彼には届いているのだろうか・・ 「会いたいよ・・・雄二・・・」 膝を抱え、いつものように澄み切った夜空を 見上げれば なぜか この想いが届くような そんな気がして・・・。 # by yuna-sos-0305 | 2005-08-20 10:23
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