DAWN~夜明け~
2015年 04月 13日
scene 2
交わされた約束
「・・・・・・・・」
「・・・・だから・・そんな顔しても無理だから!」
「そんな事言わないでよ~、お願いっ!!」
「あのね、俺明け方まで仕事でさっき帰ってきたばかりなの。で夜からまた仕事なの。
相談ならまた今度乗るから、今は寝かせてっ!!」
そう言って 瞬時に布団に潜り込んだ安岡の姿を紫穂梨は恨めしく見つめながら
ポツリと呟いた。
「・・・・・・優の意地悪・・・・・・」
溜息を1つついて、その場から立ち上がろうとした 次の瞬間だった
「・・・・・センセならさ・・・・・・」
その声が 耳元を掠めた。
「・・・・センセなら、きっと何着て行ったって、可愛いって言ってくれるんじゃない・・・」
「・・・・優・・・・・」
突然の安岡の言葉に驚きながらも、紫穂梨は 優の優しさを感じながら 感謝の言葉を紡いだ。
「・・・・・ありがとう・・・・・優・・・・・・・」
「じゃあね!俺、マジで寝るから。おやすみっ!」
そう言って 安岡は再び 布団の中へと潜り込んだ。
そんな姿を見つめながら 紫穂梨は もう1度 感謝の言葉をそっと呟いた。
「・・・・ありがと・・・・・・」
・
・
・
「・・・ごめんね、急に買い物なんて付き合わせちゃって。」
運ばれてきたアイスティーを啜りながら そう言って
紫穂梨は向かいの席に座っている透子に手を合わせた。
「・・・ううん、私も最近買い物とか行ってなかったし、良い気分転換になったわ。」
「・・・・透子のおかげで良い買い物ができたよ。自分1人だったら 絶対に迷って決められなかったと思うし(笑)」
早朝に安岡のマンションを出てから 思い付きで 友達の透子にメールをして
買い物に付き合ってほしいと頼んだところ、思いの外、あっさりとOKの返事を貰えた事で
紫穂梨は透子と共に恵比寿の街にいた。
「でも、新しい服買ったからには何かあるんでしょ(笑)?」
「・・・陽ちゃんが今度、就職祝いしてくれるって。
・・・・だから、その時に着て行こうと思って・・・・」
自分の問いに そう言って はにかみながら けれど嬉しそうに
笑顔を浮かべる紫穂梨を透子は優しく見つめながら言った。
「・・陽ちゃんって、安岡さんと同じグループの人・・・?」
「・・うん。」
「・・・もう出逢って6年ぐらいになるんだけど、逢う度に魅力を感じるんだよね・・・」
「・・・そんなに素敵な人なんだ」
「・・・うん・・・・」
透子の言葉に 紫穂梨が頷いた 次の瞬間
「おまたせいたしました」
注文したパスタが店員によって運ばれてきた。
・
・
「・・・良かったわね」
そう言って 笑顔を浮かべる 透子に優しさを感じて、
紫穂梨はそっと微笑んだ。
「・・・うん、ありがとう。」
「・・・感想楽しみにしてるから。」
「頑張ります(笑)」
穏やかな時間がそこには流れていた。
迫りくる、北山との約束の日に 心を躍らせながら
紫穂梨はアイスティーを啜った。
・
・
レコーディングルームで ふと視線を感じて 後ろを振り向けば
そこには安岡の姿があった。
「・・・・ヤス。」
「・・・紫穂梨から訊いた。就職祝してくれるんだって?」
ゆっくりとソファーに腰を下ろしながら 安岡は北山を見つめながら言った。
「・・・あぁ、うん。 たまには食事でも連れてってあげたいなって思ってたんだけど、なかなか機会も
なかったし 就活頑張ってたの見てたからさ、だからちょっとでもお祝いしてあげたいなって思ってね」
「・・・そっか・・。」
ポツリと呟いた安岡に 北山は安岡を見つめながら言った。
「・・・もしかして俺、誘ったら・・マズかった?」
「・・・・そんな事ないよ。6年前に紹介してから、センセ 紫穂梨のことずっと可愛がってくれてるし、俺も嬉しいなって。就職祝いの件だって、紫穂梨、メチャクチャ喜んでたしさ。」
「そっか、それなら良かった。」
安岡の言葉に 安渡の表情で微笑んだ北山に 安岡はゆっくりと言葉を紡いだ。
「・・・これからも大切にしてあげてよね、紫穂梨のこと。」
その安岡の言葉に 楽譜を捲っていた手を止めると
「・・・勿論。」
そう言って 柔らかく微笑んだ。
この後、北山の言葉が予想外に覆されていく事など 安岡も そして北山自身も想像していなかった。
by yuna-sos-0305
| 2015-04-13 00:48
| 小説