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by yuna-sos-0305
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夢幻花 第2話


「プリンなんて久しぶり~」
そう言って安岡は美味しそうにプリンを口に運んでゆく。
美咲が入院して2週間 仕事の合間を見ては美咲の元へ通うようになった酒井はメンバーである村上達にせめてもの礼として美咲が足しげく通っていた店のプリンをみやげとして買っていくようになった。
「で、美咲の様子はどうなんだよ?」
プリンを食べ終えた村上は開口一番酒井にそう 切りだした。
酒井は小さく溜息をつくとポツリ、ポツリ話し始めた。
「まだわからないらしいんです・・今回倒れた原因が持病の心臓病と関係あるのか・・・」
「お前・・・時限爆弾持ってるようなもんだな・・・」

「とにかく高坂先生の話ではしばらくの間、様子を見るそうなのでしばらくの間、お願いします」
そう言って酒井はメンバーに頭を下げた。
************************************




酒井が帰り支度をしていると黒沢が寄ってきた
「…ごめんな…」
「…え…?」
「美咲ちゃんがこんな風になった時に・・北山から・・聴いただろ?・・」
「ええ・・良かったじゃないですか」
そう言って酒井は優しく笑顔を浮かべた。
「酒井・・・俺、延ばすよ」
「延ばすって・・・」
「香織との結婚。やっぱり美咲ちゃんにも元気になって出席してもらいたいからさ」
「黒ポン・・・」
「ん?」
「黒ポンの気持ちは嬉しいですけど俺は正直、仲間だからこそ黒ポンの好意に甘える事は
できません」
黒沢を見つめ、酒井はゆっくりとけれど確かに自分の気持ちを口にした。
「酒井・・・」
「それに黒ポンと香織さんの幸せ・・邪魔する事は・・・邪魔する権利・・俺にはありませんから・・・」
「そっか・・なんかバカだな俺・・1人で突っ走って・・・」
そう言って小さく笑う 黒沢を見つめながら酒井はそっと呟いた。
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「でも俺は・・美咲のために何かできてるんでしょうか・・・」
「え・・・?」
「あいつは・・美咲はいつだったか言ってくれたんです。“雄二のためなら全てを投げ売ってもいいって・・雄二のためなら・・命・・この命さえも惜しくないって・・そう言ってくれたんです・・・」
「カッコいいじゃん、美咲ちゃん」
酒井を見つめ黒沢は言った。
「今頃気付いたんですか?なんてたって美咲はVOGUEの専属モデル・・・」
「あ~はいはい。分かったから少し落ち着いて。って・・いつもならこれ俺がみんなに言われてるセリフだよ(笑)」
「ですね(笑)」
「でさ、話戻すけど美咲ちゃん、当分復帰は望めない状況なの?」
「入院が長びけば・・・・」
「そっか・・・・」
「モデルの世界も体力勝負ってところがありますからね・・・」
「美咲ちゃん、仕事のことは何て言ってる?」
「今のところは特に何も・・・・」
「早く良くなるといいな・・・・」
「ええ・・・・」
********

『元気だった?』
『元気だったよ。真尋は?元気だった?』
『元気!って言いたいところだけど・・・』
そう言って真尋は上目づかいに北山を見つめた。

日曜日、久しぶりのオフをもらった北山は恋人・真尋を誘い
家族連れで賑わう水族館に来ていた。

『何かあった?』
心地よい風に吹かれながら北山は訊いた。
『・・・・・元気じゃなかった・・・・元気でいようと思ったけど・・・陽一と会えるから頑張ろうってそう・・・思ったけど・・・寂しくて・・・・』
真尋の言葉を聞き終わらないうちに北山は真尋を抱き締めていた。
『・・・・・・陽一・・・・?』
『・・・ごめん・・・・』
『え・・・・・?』
『俺のせいで・・こんな寂しい思いさせて・・・本当にゴメン・・・』
『・・・・・・』
『バカ・・・何で謝るのよ・・・どうして謝るの?こんなの・・・いつものことじゃない・・・』
真尋の髪を撫でていた北山は真尋を更につよく抱き締めると耳元でそっと囁いた。
『・・・・今夜は真尋のことずっと感じていたい・・・・・』
******************
『藤谷香織がお送りしてますmidnight express
 今夜もたくさんのFAX、お葉書、そしてメ-ルありがとうございました』

『お疲れさまでした~』
『おつかれ~っていうか来てるよ、噂の彼が(笑)』
『えっ?』
ディレクタ-の言葉に香織が驚いて顔を上げると そこには笑顔で手を振る黒沢の姿があった。

****************




『もうビックリした~』
『ごめん、ごめん(笑)珍しく仕事が早く終わってボ-ッとしてたらなんか香織の顔が見たくなってさ』
『ありがと・・・(笑)で?こんな時間に今からどこに行くの?』
そう言って香織はハンドルを握る黒沢を見つめながら訊いた。
『・・・美咲ちゃんのところ』
『え・・?』
『酒井がさ、最近元気ないんだ・・・・まぁ無理するなって言うと酒井は余計に
頑張っちゃうやつだからさ・・・酒井の奴、美咲ちゃんの事でいつも悩んでるから・・・付き合って5年だろ?もうそろそろ結婚考えたっていいのにさ・・・やっぱり自分がいつも傍にいてやれない事に不満感じてるみたいでさ・・・』
『・・・・』
『あいつはさ・・・酒井はすごくいい奴だし、2人とも俺達のことすごい応援して
くれただろ?だから恩返ししたいんだ・・あいつに・・・酒井に心から笑ってほしい・・・・』
『・・・薫・・・・』

初夏の風がそっと頬を撫でていった
静かな夜の闇に 溢れそうな想いが零れ落ちていた。
**************

『ん・・・・?』
『あ・・ごめん・・起こしちゃった?』
『ううん・・・』
『なんかさ・・・・』
『うん・・・?』
『やっぱり綺麗だな~って思ってさ・・』
そう言って自分を見つめる北山を優しく見つめ返すと
真尋は言った。
『そういう陽一もまた随分、お世辞が上手になったわね(笑)』
『・・・・』
『う~そ。嬉しかった・・ありがと。』

無邪気に笑う真尋の姿を見つめていた北山はいつの間にか
その言葉を発していた。


『真尋・・・』

『ん?』
『・・・・結婚してくれないか・・・・?』
『・・・・陽一・・・・・』

時を刻む時計の針の音だけが静かな部屋に響いていた・・・。
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by yuna-sos-0305 | 2005-12-07 21:39