文章中心のサイトです。


by yuna-sos-0305
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

小さな約束

「・・・あ・・・」

それは偶然だった。
部屋で捜し物をしていた時に私の足下に転がり込んできた
小さなおもちゃの指輪。

「懐かしいなぁ・・・」
そう呟いて指輪を見つめる。
その指輪は、幼なじみの彼が夏祭りの縁日でくれたものだった。
ふと彼の顔を思い出し、そっと指輪を見つめながら呟く。
「覚えてるかな・・・あの約束・・・。」
******
「これを俺が?お前に?」
私が差し出した指輪を見つめながら彼は驚いた表情を浮かべながら
言った。
「そんなこと、あったっけか?」
そう言って頭を掻いてあれこれ思案している彼。
覚えていなくても無理はなかった。
何せこの指輪は彼が雄二が5歳の時にくれたもの。
その当時、真っ赤な顔をしながら指輪をくれた時に
言ってくれた彼の一言は今も心の奥底に輝いている。
「大きくなったらお前を嫁さんにしてやるからな!」
不器用だけど彼らしい言葉。
その当時、プロポ-ズなんて知らなかった私はただただ
雄二の言葉が嬉しくてはしゃいでいたっけ・・・。

懐かしい想い出に浸っている私の隣で雄二は、難しい顔をしながら
指輪を見つめている。

「本当に忘れちゃったの?この指輪私にくれたこと。」
「・・・すまん・・どうもこうにも思い出せなくて・・・」
忘れるのも無理はない。
けれどあれは嘘だったと、冗談だったと・・そんな言葉を
聞くのが嫌でついつい彼を責めるような口調になってしまう。
「この指輪、お前のために買ったんだからな!って言ってくれたじゃない・・言ってくれたじゃない・・・雄二・・・私のこと・・・
・・・・私のこと・・・・」声が涙で奪われていく・・
雄二の顔が涙で曇っていく・・・・。

「・・・美咲?大丈夫か?」
力無く床に崩れ落ちた私に雄二の暖かな声が降り注ぐ。
「美咲・・・すまない・・・・俺のせいだよな・・・」
そう言って私を見つめる目は切ないほど優しくて・・・。
「・・・忘れても仕方ないよね・・・。もう昔のことだし・・・。
でもね・・・この指輪をくれた時に言ってくれた雄二の言葉・・
本当に本当に嬉しかったんだよ・・・」
「・・・俺が・・か?・・」
「・・・・大きくなったらお前を嫁さんにしてやるからな!」
って・・・・。
「・・・・・雄二・・・?」
「・・・・俺・・・そんな事・・・言ったのか・・・・・?」
恥ずかしそうに、俯く彼。
「うん。嬉しかったなぁ・・・雄二と一緒にいられるんだってそう
思ったら嬉しくて嬉しくて・・・」
「・・・俺も若かったって事だな・・(苦笑)」
「そうだねぇ・・なんてたって5歳だし(笑)」
「・・・ひとつだけ・・・ひとつだけ聞きたい事があるの・・・。」
「・・・ん・・・?なんだ?」
「・・・あの言葉・・・「将来お前を嫁さんにしてやるからな」
って言葉は・・・本当にそう想って言ってくれたの・・・?」

短い沈黙の後、
小さく溜息をついて雄二は言った。
「何を言わせるのかと思ったら…・・」
そして私を見つめて・・言った。
「昔も今も俺の傍にいるのはお前であることに変わりはないし、
俺が昔も今もそしてこれからも・・ずっと・・大切にしていきたい
って……守っていきたいって思うのは美咲・・・お前だけだから・・・・それから付け足して言わせてもらうならば・・・」

「これからもお前と一緒に歩んで行きたい・・・これが俺の
気持ちだ・・・・」

想い出が新たな未来へと変わった瞬間。
彼が左手のくすり指にはめてくれた銀のリングが何よりも
それを証明していた。

そして約束の小さなリングは彼の言葉と共に
そっとしまい込んだ。

昔も今もこれからも

ずっと

あなただけを感じていたい・・・。

小さな約束c0042410_21504786.jpg
[PR]
by yuna-sos-0305 | 2005-01-25 22:47