第13話
2005年 01月 29日
ライブ終了後、打ち上げのために訪れた和食料理屋。
週末ということもあって店内は賑やかな話し声や笑い声で溢れている。
「やっぱりライブの後に飲むビ-ルは最高だねぇ~」
店に入ってから約1時間
それほど酒には強くないといつか言っていたのに
気がつけば黒沢の前には多数のビ-ル瓶が転がっていた。
「ほら、みんなも飲んで飲んで。今日は俺がバ-ンと奢っちゃうからさ~」
そう言いながら 赤く染まっている黒沢の顔を見つめながら
誰ともなく溜息をついた。
「お前、ちょっと飲み過ぎだって。悪いこと言わねぇから今日はもうやめとけ。なっ?」
「そうそう、いくらなんでも飲み過ぎだよ、黒ポン」
残り僅かな 塩辛などのつまみを口にしながら安岡が村上に続くように言った。
そう言って黒沢の隣に座っていた村上が黒沢からまだ半分は残っているであろう
コップを取り上げた。
「あ~、なんだよ~。せっかく人がいい気持ちで呑んでるのに~!!」
その様子を見ながら、酒井と向かい側に座っていた北山が
酒井を見つめた。
「俺、水もらってきます。」
そう言ってコップ片手に 酒井は座敷を出ると
店の従業員がいる、カウンタ-へとゆっくりと歩き始めた。
その時だった。
「キャッ・・・」
誰かとぶつかったのか、酒井は一瞬よろめき
視線をゆっくりむけると、酒井の足下には無数のガラスの破片が広がっていた。
「ごめんなさい。怪我ありませんでしたか?」
そう言って自分を見つめるのは 20代後半だろうか
綺麗な髪を肩まで揃え、白のワンピ-スに身を包んだ女性だった。
「・・・・・・・・・・・・」
酒井は自分が言葉を失っていることに気がつかなかった。
「あ、ジャケット汚れちゃってますね」
女性にそう言われ酒井が着ていたジャケットに視線を落とすと
左側にぶつかった時についたであろう小さなシミが出来ていた。
「あ~、本当だ。」
「あのっ、良かったらクリ-ニングさせてもらえないですか?」
「えっ・・・?」
「ぶつかったのは私の方ですし、ジャケットまで汚してしまって・・・」
「これぐらい大丈夫です。それより怪我がないようで良かったです」
そう言って酒井は女性に笑みを浮かべ、その場から立ち去ろうとした。
その瞬間
「あのっ、今日のライブ最高でしたっ!」
その女性の言葉に酒井はゆっくりと振り返り、バツが悪そうな表情を浮かべた。
そして女性の元へと踵を返し、ジャケットを脱ぐと 立ち尽くす女性に
そっと手渡した。
そして
人差し指を唇に当てながら
そっとその透き通る声で囁いた。
「交換条件です。あなたにこのジャケットをクリ-ニングしてもらう代わりに・・・・」
そう言いながらジ-ンズのポケットから折り畳まれた紙切れとペンを取り出すと
手早く何かを書き
「俺がここに来ていたこと、内緒にして下さいね?」
そう言ってその小さな紙切れを手渡した。
そして微笑みを浮かべると ゆっくりとカウンタ-へと姿を消した。
ぼんやりと 消えてゆく後姿を見つめていれば
「お客様、いかがされましたか?」
店の店員が真尋を見つめていた。
「あ・・・すみません、実はコップを割ってしまって・・・」
そう言って足元に無数に広がる、ガラスの破片に視線を注ぐ。
「さようですか。お怪我はされてませんか?」
「大丈夫です。」
「分かりました、今すぐ片付けますので。」
店員と言葉を交わしながらも、真尋の心には酒井の笑顔が
蘇っていた。
週末ということもあって店内は賑やかな話し声や笑い声で溢れている。
「やっぱりライブの後に飲むビ-ルは最高だねぇ~」
店に入ってから約1時間
それほど酒には強くないといつか言っていたのに
気がつけば黒沢の前には多数のビ-ル瓶が転がっていた。
「ほら、みんなも飲んで飲んで。今日は俺がバ-ンと奢っちゃうからさ~」
そう言いながら 赤く染まっている黒沢の顔を見つめながら
誰ともなく溜息をついた。
「お前、ちょっと飲み過ぎだって。悪いこと言わねぇから今日はもうやめとけ。なっ?」
「そうそう、いくらなんでも飲み過ぎだよ、黒ポン」
残り僅かな 塩辛などのつまみを口にしながら安岡が村上に続くように言った。
そう言って黒沢の隣に座っていた村上が黒沢からまだ半分は残っているであろう
コップを取り上げた。
「あ~、なんだよ~。せっかく人がいい気持ちで呑んでるのに~!!」
その様子を見ながら、酒井と向かい側に座っていた北山が
酒井を見つめた。
「俺、水もらってきます。」
そう言ってコップ片手に 酒井は座敷を出ると
店の従業員がいる、カウンタ-へとゆっくりと歩き始めた。
その時だった。
「キャッ・・・」
誰かとぶつかったのか、酒井は一瞬よろめき
視線をゆっくりむけると、酒井の足下には無数のガラスの破片が広がっていた。
「ごめんなさい。怪我ありませんでしたか?」
そう言って自分を見つめるのは 20代後半だろうか
綺麗な髪を肩まで揃え、白のワンピ-スに身を包んだ女性だった。
「・・・・・・・・・・・・」
酒井は自分が言葉を失っていることに気がつかなかった。
「あ、ジャケット汚れちゃってますね」
女性にそう言われ酒井が着ていたジャケットに視線を落とすと
左側にぶつかった時についたであろう小さなシミが出来ていた。
「あ~、本当だ。」
「あのっ、良かったらクリ-ニングさせてもらえないですか?」
「えっ・・・?」
「ぶつかったのは私の方ですし、ジャケットまで汚してしまって・・・」
「これぐらい大丈夫です。それより怪我がないようで良かったです」
そう言って酒井は女性に笑みを浮かべ、その場から立ち去ろうとした。
その瞬間
「あのっ、今日のライブ最高でしたっ!」
その女性の言葉に酒井はゆっくりと振り返り、バツが悪そうな表情を浮かべた。
そして女性の元へと踵を返し、ジャケットを脱ぐと 立ち尽くす女性に
そっと手渡した。
そして
人差し指を唇に当てながら
そっとその透き通る声で囁いた。
「交換条件です。あなたにこのジャケットをクリ-ニングしてもらう代わりに・・・・」
そう言いながらジ-ンズのポケットから折り畳まれた紙切れとペンを取り出すと
手早く何かを書き
「俺がここに来ていたこと、内緒にして下さいね?」
そう言ってその小さな紙切れを手渡した。
そして微笑みを浮かべると ゆっくりとカウンタ-へと姿を消した。
ぼんやりと 消えてゆく後姿を見つめていれば
「お客様、いかがされましたか?」
店の店員が真尋を見つめていた。
「あ・・・すみません、実はコップを割ってしまって・・・」
そう言って足元に無数に広がる、ガラスの破片に視線を注ぐ。
「さようですか。お怪我はされてませんか?」
「大丈夫です。」
「分かりました、今すぐ片付けますので。」
店員と言葉を交わしながらも、真尋の心には酒井の笑顔が
蘇っていた。
by yuna-sos-0305
| 2005-01-29 09:45