文章中心のサイトです。


by yuna-sos-0305
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

第17話 


ふと彼女の微笑みを思い出す。

静かな けれど温かな微笑み。


いつの間にか彼女と会える日を


楽しみにしている自分がいた。


彼女との距離が近づくたび


嬉しさを押さえきれない自分がいた



いけないと思っていても 心は自然と彼女に向いていた。


この想いが許されないものなら


ずっとこのまま胸に秘めたままでいい



だからずっと彼女の傍に居させて欲しい、と心から願っている自分が居た。


「コ-ヒ-冷めますよ?」

北山の声でふと我にかえる。

気がつけば目の前の五線紙は見事に空白のままだった。

「あ・・・・・・」

「何かあったんですか?」

ゆっくりとコ-ヒ-を飲みながら北山が呟く。

「えっ・・・?」

「いや・・・“最近酒井さんの様子が変だ”って。ヤスが言ってくるんですよ(笑)」

そう言って静かに笑う。

「まぁ、いろいろとな・・・・・」

そう呟いて テ-ブルに置かれたコ-ヒ-をゆっくりと啜る。

「ヤスに詮索されないように気をつけないといけませんね(笑)」

ゆっくりと椅子から立ち上がる北山に

酒井はいつの間にか話し始めていた。

「好きな・・・人がいるんだよ・・・・・・」


「え・・・・?」

酒井の突然の告白に北山は驚きの表情を浮かべた。

「まだ出逢ったばっかりなんだけど・・・なんか一緒にいるとすごく落ち着いてさ・・・」

「そう・・・・・」

「って言っても・・・彼女、結婚してるから俺が立ち入る隙なんて全然ないんだけど・・・
でも・・・・友達でいいから・・・ずっと彼女の傍に入れたらいいな・・・なんて思ったり
しててさ・・・・・・」

外の景色を見つめながらそう呟く酒井に

北山はゆっくりと言った。

「いいんじゃないですか・・・?どんな形であれ、恋は恋なんですから・・恋愛って言うのは出逢う前から始まってると僕は思うんです・・・・だから相手に出逢えたなら、それからはただ自分の気持ちを信じて進んでいくだけだと思いますよ・・・事実、人の気持ちなんて誰にも変えられませんしね・・・僕は雄二のこと応援しますから・・・・」

北山のその言葉に酒井はゆっくりと北山を見つめると言った。

「ありがと・・・な・・・・」

小さく微笑みを浮かべると北山はブ-スの中へと入っていった。


「自分の気持ち・・・か・・・・・」

北山の言葉をそっと口の中で呟いて


立ち上がったその時


「・・・・葉月・・・?」

携帯が仲の良い女友達からの着信を告げた。

*********

「ごめんね、急に呼び出したりして」

「いや、ちょうど休憩してたところだから・・・」

事務所近くにあるなじみの喫茶店。

大学時代からの付き合いである彼女は大手の出版社に勤めていた。

「どうした?」

心なしか元気のない彼女にそっと問いかける。

「えっ・・・?」


「なんかあっただろ?顔にそう書いてある」


ついさっきまで、北山に励まされていた自分が

今度は逆に励ましている。

そんな事実に心の中で小さく笑う。

「ふられちゃってさ・・・・」

コ-ヒ-カップの淵を指先で辿りながら彼女がそっと呟く。

「ふられたって・・・結婚考えてたっていう・・彼にか・・・?」

俺の言葉に彼女が無言で頷く。

彼のことは何度も話に聞いていた。

「自分が自分でいられる相手なの」そう嬉しそうに話していた彼女をふと思い出す。


「私の事はもう女として見られないんだって・・・長く一緒に居過ぎちゃったんだよね・・・
きっと・・・・」

寂しそうにそう呟いて

彼女はそっと窓の外の景色に視線を流す。


そして行き交う人や車の流れを見つめながら


小さく呟いた。


「・・・・雄二は・・・好きな人いる・・・・・?」


じっと俺を見つめる 彼女に


俺は自分でも気がつかない間に


答えていた。


「ああ・・・・・・・」


その時、俺は彼女の表情が変化したことに

気付いていなかった。


俺は いつも


肝心なところで


大切な何かを 


見逃してしまうんだ



だからこそ


彼女のことは 


真尋の事は


何があっても失えないと
失いたくないと


そう心から


願っていたんだ・・・・


c0042410_22594095.jpg
[PR]
by yuna-sos-0305 | 2005-01-31 20:10