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by yuna-sos-0305
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第19話 

不覚にも 数日後 酒井は 度重なる疲労と風邪によって

ベットの上で寝込んでいた。

「38度5分かぁ・・・ちょっと熱あるね~」


さっきまで脇の下で計っていた体温計を見つめながら黒沢が呟いた。


「しょがねぇよな・・・酒井お前、風邪治るまでしばらく休め。リ-ダ-直々からの
命令だ」

サングラス越しに そう言って笑う村上の姿になぜだか優しさを感じた。


「酒井、何か食べたいものとかある?俺、作ってあげるよ。」

そう言って腕をまくり、立ち上がろうとした黒沢を村上が制止した。

「なんだよ村上」

「こ-いう時は男より女だろ?」

「女?」

村上の言葉に疑問符を浮かべる黒沢をよそに、村上は部屋の中をゆっくりと


見渡し始めた。


「酒井、お前の鞄ってこれか?」

そう言って黒の大きな鞄に視線を注ぐ。


「そうですけど・・・何か・・・・?」


「ちょっとな・・・・」


そう呟いて 酒井の携帯を見つけると 携帯を取り出し


酒井に見つからないように そっと部屋を出た。


「あれ?村上?」


********

「確か神崎とかって言ってたよな・・・北山の奴・・・・・」

そう小さく呟いて


携帯のメモリ-を呼び出す。


「河野・・・香川・・・神崎・・・あった・・・これだ・・・神崎真尋・・・・」

ディスプレイに浮かび上がるその名前を見つめた後


村上はゆっくりとその携帯番号へと発信した。

******

黒沢が“風邪にいいから”とキッチンに立ってス-プを作っている間

酒井は 扉の向こう側で何をしていたんだ?と 村上に問いただした。

けれど、村上は「ちょっと、いろいろとな・・・・」 そう呟いては

いたずらっこのような笑みを浮かべ、酒井の度重なる質問をなんなくかわし続けた。


いつまでたっても進展しない村上との会話に疲れ果て


天井をぼんやりと仰いでいた頃



扉の向こう側から 誰かの来訪を告げるチャイムが



鳴り響いた。


「来たな・・・・・」


そう呟いて 扉の向こう側へと歩き出していく村上の背中を


ぼんやりと見つめながら



しばらくすると 村上と黒沢の話し声が聞こえた。



********

「村上この人って・・・・・」


驚きの表情を浮かべたまま 立ち尽くす黒沢を見つめると村上は言った。



「俺が呼んだんだよ。」



村上と黒沢のやりとりを静かに聞いていた 女性に村上はゆっくりと振り向いて言った。


「悪かった。急に呼び出したりして・・・・あんたが真尋さん?」



「はい・・・・・」


「・・・・酒井のやつ、奥でくたばってるから行ってやって?俺らはこれで帰るから」


「・・・でも・・・・・」


村上の合図に気付いたのか、黒沢が慌てて帰り支度を始める。


「あんたがいれば、十分だろ?それにあいつが今、一番傍にいて欲しいのはきっと

あんただと思うからさ・・・・頼んだぜ・・・・」

そう言って 彼女の肩をそっと叩く。


「そこに野菜ス-プ作ってあるから酒井に飲ませてやってね?」


屈託のない笑顔で黒沢が彼女に声を掛ける。


「・・・分かりました・・・・。」



「あ、それと・・・・」



「あいつの様子が落ち着いたら、俺のところに連絡くれるように伝えといてくれねぇか?」


「分かりました・・・伝えておきます・・・・」


彼女の笑顔を確認すると、ゆっくりと玄関のドアを閉め


村上は黒沢と歩き始めた。


「・・・・・・・」


「・・・・綺麗な人だったね・・・・」


「そうだな・・・・・」


「・・・・酒井と彼女・・・うまくいけばいいね・・・・」


「・・・・ああ・・・・・・」



「・・・・・黒澤・・・・」


「・・・・何・・・・?」


「カレ-食いに行かねぇか・・・・?」


「うんっ!!!」


********

ゆっくりと足音が聞こえたのを確認すると


酒井は 笑いながら言った。


「また2人で何、共謀してるんですか笑)?」


そう言って 酒井が声を掛けたはずの村上はそこにはいなかった。


「・・・・真尋・・・さん・・・・・・」


代わりに いるはずのない 彼女の 姿が  そこにあった。


「・・・・・・どう・・・して・・・・・?」


突然の出来事に戸惑いながらも 視線は もう既に 彼女に 捉えられていた。


「・・・・村上さんが連絡くれたんです・・・「酒井のやつが熱出して、寝込んでるから来て

やって欲しい」 って・・・・・」


さっきまでの村上の表情を思い出す。


「・・・・あいつ・・・・・・」


「やっぱり・・・・迷惑ですよね・・・・」


消えそうな声で 彼女がそっと呟く。


「そんな・・・迷惑だなんて・・・・迷惑じゃ・・・ないです・・・・」


「えっ・・・・?」


酒井の言葉に 彼女が顔を上げる。


「・・・・・・むしろ・・・嬉しいぐらいです・・・・・」


そうやっとの思いで 自分の気持ちをつたえると


そこには  嬉しそうに  微笑みを浮かべる 彼女がいた。


*******

「ごちそうさまでした。」

そう言って 彼女に頭を下げる。


「私が作ったんじゃないですけど(笑)」

そう言って笑いながら 空になった皿をゆっくりとトレ-に乗せ、キッチンへと運んでいく。


彼女が今 こうして自分の傍にいる  その事実だけで


なぜか不思議と 幸せに満たされる自分がいた。


「でも、黒沢さんって、お料理上手なんですね、ビックリしちゃいました(笑)」


「あいつの料理好きはファンの間でも有名なんですよ(笑)メンバ-だからって訳じゃない
ですけど、あいつの料理はかなりプロ級なんです。まぁ、いわゆるゴスはメンバ-内に
“お抱えシェフ“がいるって感じですかね(笑)」


「良かった・・・・」


「え・・・・・?」


「村上さんから電話貰って、ここに着くまでの間、本当はすごく不安だったんです。

私はただ酒井さんとは時々会って、食事するぐらいの関係なのに・・・いくら緊急だからって

こんなこと引き受けていいのかって・・・プライベ-トな事にまで押し入って酒井さんに

嫌われたらどうしようって・・・そればっかり考えてて・・・でも酒井さんの笑顔を見たら

安心しました・・・いつもと同じように・・・私のこと受け入れてくれたから・・・・・・」

そう言って 涙を浮かべる彼女の姿を 見た瞬間


俺の中で  何かが  弾けた。



涙を拭う彼女の頬にそっと ゆっくりと触れる。


「・・・・・酒井さん・・・・・・?」


じっと俺を見つめる 彼女の瞳を見つめたまま



酒井はゆっくりと 呟いた。


「・・・・・・本当は最初から・・・気付いてたのかも知れません・・・自分の中にある気持ちに・・・

でも・・・・俺がどうあがいたところで、何も変わることはないって・・・そう思っていたから・・

これまで・・・隠してきました・・・自分の気持ちを・・・・。本当の気持ちは・・・伝えられなくても

真尋さんの傍に 居られればそれでいいって・・・そう自分にいい聞かせて・・・・自分の

気持ちをごまかしてきました・・・でも・・・・今・・・俺の前で・・俺のために涙を流すあなたを

見て・・・もう嘘はやめようと・・・自分の気持ちに正直になろうって・・・そう・・・決めました・・・」


時計の針がゆっくりと時間を刻む音だけが 静かな部屋に響いていた。


「・・・・・酒井さん・・・・・・?」


「・・・・・・・俺は・・・・・・」


ゆっりと息を吸いながら 続きの言葉を告げる。


「・・・・・・真尋さん・・・あなたが好きです・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


俯いた彼女に そっと声を掛ける。


「やっぱり・・・迷惑ですか・・・・?」


無言のまま、首を振る彼女。



「・・・・あなたの・・・答えを・・・聞かせて下さい・・・・・・」



短い沈黙の後、涙声で彼女がそっと呟いた。


「・・・・ずるいです・・・・・・・」


「・・・・え・・・・・?」


「そんな風に言われたら・・・何も言えないです・・・・・私だって・・・酒井さんの事、好きでした

でも・・・ずっと心のどこかで酒井さんを想うことを禁じてた自分がいて・・・必死で自分の

気持ちをセ-ブしてたんです・・・・だから・・・そんな風に言われたら・・・酒井さんにそんな

風に言われたら・・・私はもう何も言えなくなるから・・・・」

そう言って 溢れ続ける涙を拭う彼女の姿を見つめながら


もう一度 その頬に触れて 言った。


「・・・・俺と一緒に居ることで、逆にあなたのことを傷つけてしまうかもしれません・・・・・・


でもそれでも・・・傍にいてくれるのなら・・・・俺はあなたと生きていきたいんです・・・・・


2番目でいい・・・・俺は俺なりの方法で・・・真尋さんを愛していきます・・・・・・」



「・・・・・・酒井さん・・・・・・」


そっと自分を見つめ、自分の名前を呟く彼女を見つめながら酒井は 


その言葉をそっと呟いた。


「・・・・・・愛してます・・・・・・・・・・」


 その言葉に嬉しそうに笑顔を浮かべる彼女に


酒井はそっと 口づけた。



いつのまに 降りだしていた


雨が 静かな部屋の中、寄り添う2人を 


そっと 優しく包んでいた・・・・・。


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by yuna-sos-0305 | 2005-02-01 20:31