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by yuna-sos-0305
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風をつかまえて





不思議なものだと思う。
1年前まで名前も知らなかった君と会えるのを 
今は待ち遠しく感じている自分がそこには居た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






『レコーディング終わったら、透子ちゃんに会いに行くんでしょ?』

楽譜をまとめていた黒沢の元に安岡が笑顔で話しかけてくる。

『うん・・・会いに行くって約束したから・・・・』
『そっか・・・。でもアーティスト冥利に尽きるんじゃない?』
『え?』
『透子ちゃん。彼氏から一方的に別れを告げられて泣いてたとき、ラジオから流れてきたのが永遠にで、次の瞬間には黒ポンの歌声に惹かれたなんてさ・・・それこそドラマじゃん(笑)』
『いや・・・その・・・まぁ・・・・』
仲間の言場に 照れくささを感じながら 返事を反す。

『・・・まぁ、でも明日でレコーディングも終わりだし、良かったじゃん。これで心置きなく、透子ちゃん迎えに行けるね』

優しげな 笑顔を浮かべながら 安岡はそっと微笑んだ。


『ああ・・・そうだな・・・・』



『今度さ、透子ちゃん、紹介してよね?黒ポンばっかり、あんな美人な子、独り占めなんて、俺、許さないんだかんね(笑)?』


安岡の言葉にはいはい、と笑いながら 黒沢は
明日に迫った透子との再会に想いを馳せていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




同じ頃、沖縄に居る透子は受信したばかりの黒沢からのメールを愛しそうに見つめていた。

『From 黒沢薫

subject 透子へ・・・
「透子へ 
いよいよ明日、透子に会えると思うと、嬉しい気持ちを抑え切れなくて今日もまた村上に怒られたよ(笑)でも、《透子に会える》っていう気持ちが、純粋に今の俺を動かしてて、明日本物の透子に会えるまで、俺はこの想いを糧に沖縄に向かうと思う(笑)
でも本当に人生って不思議だよね、1年前まで俺は透子の名前さえも知らなかったのに、偶然流れてきた、曲によって透子が俺の歌声を聞いてくれて・・・こうやって1年経った今、東京と沖縄。距離的には離れてるけど、俺と透子は繋がってる。確かに俺は透子を・・・透子は俺を(・・・感じてくれてる?ちょっと心配・・・(笑))感じてる。1年前で他人同士で、もしかしてあの曲が・・ラジオから流れなかったら、今の俺達はいなかったはず・・・
そう考えると、とても不思議だし・・だけど運命的だなって思うんだ・・・・。そういえばレコーディングでいい曲ができたんだよ。ヤスがね、歌詞を書いてくれたんだけど・・・なんていうか・・・はっきり言って今の俺たちじゃん?みたいな(笑)そんな感じの曲でさ、
明日、会えたときに、生で歌ってあげるからさ、楽しみにしてて?東京はあいにくの天気が続いてるけど、沖縄は天気いいんだろうな~・・・明日、こっちを2時発の便で立ちます。たぶん3時ぐらいには着くと思うから・・・だから・・・あの海岸で待ってて欲しい・・・・・・
薫 PS もう・・・離さないから・・・・・」』

  
                                                         
『薫・・・・・・』



黒澤の確かな想いを感じ、透子は携帯電話を静かに胸に抱きしめた。


きっかけは1年前 1曲の曲だった。

高校時代から付き合ってきた彼からの、突然の別れ。
悲しくて 辛くて 1人 部屋で泣いていた時

ラジオから流れてきた 男性の歌声。

それが黒澤の歌声であり、ゴスペラーズの『永遠に』だった。

運命的とも思える出会いが、出会いを呼び1年前の夏、透子は自分の悲しみを癒してくれた、その歌声の持ち主
黒沢と出会い、恋に落ちた。
そして運命的な出会いから1年・・・
気がつけば、黒沢との再会が明日に迫っていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『黒ポンは?』
『うん、さっき30分位前かな?空港に行ったよ』
『そう・・・』
北山は優しく微笑むと、椅子に腰を下ろした。
『でもさ、1年ぶりの再会なんて、なんか織姫と彦星みたいだよね(笑)』
クスクスと笑いながら、安岡は手にしていたボールペンをくるくると指で回した。
『去年、黒ポンと透子ちゃんが初めて会った時のこと、覚えてる?』



いたずらな笑顔を浮かべながら、訊いてくる安岡に北山は小さく笑いながら言った。
『覚えてるよ・・・・』




よく通る、温かさを秘めた声、
そして何よりもその笑顔が 透子の脳裏に蘇っていた。
波の音が心地よく、耳に響き渡る。
優しげな笑顔が 沈んでゆく夕日に眩しかったことを覚えている。
そっと腕時計で時間を確認すれば、時計の針は3時をもうじきでまわるところだった。
<あの海岸で待ってて>
黒沢からのメールの言葉を思い出し、胸が高鳴る。


そっと深呼吸をして、その名前を呟いてみる。

『薫・・・・・』











短い静寂の後、


その声が 響いた。

『・・・ただいま・透子・・・』





ゆっくりと振り向けば その優しげな笑顔が輝いていた。




溢れる涙もそのままに 駆け出して その胸に飛び込む。

『・・・っ・・・薫・・・会いたかった・・・・』






背中にゆっくりと回される両腕の感覚さえも 嬉しくて また涙が溢れる。

『俺も会いたかったよ・・・透子・・・っていうか、タクシーの運転手さん、急かして
飛ばさせて来ちゃった(笑)』
『え・・・?』
『・・・・・・・【大切な人を待たせてるんです、だから1分1秒も遅れたくないんです】って・・・そう言ったら、タクシーの運転手さん、“そりゃ大変だ!“って言って、すっごいスピードで飛ばしてくれてさ。かなりスリルだったよ~(笑)』


透子の黒く、長い髪を優しく撫でながら黒沢はそう言って微笑んだ。
『薫・・・・・』

『北山にも、“もうこれ以上、黒ポンの大切な透子ちゃんを待たせちゃいけないよ“って言われてさ・・・』
『・・・・・』
『まだ1年だけど・・まだ始まったばかりだけど・・・やっぱり俺には、透子が必要なんだ・・・だから・・・・』
『・・・・・薫・・・・・』
『・・・・一緒に生きてゆこう・・・・・?』
『・・・うん・・・・』



言葉にすれば消え去ってしまいそうな想いを
幾つ胸に抱えただろう

言葉にしたら溢れそうな想いを
幾つ この胸に感じただろう・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



『おい・・黒沢はどうしたよ?』
『あ、リーダー。』
事情を知らない村上に 北山は優しく微笑みながら言った。
『黒ポンなら沖縄に行きました。なんでも、透子さんに会ってくるんだそうですよ?』
『はぁ?沖縄。なに考えてんだよ、黒沢の奴。おい、電話しろ、電話。すぐに戻ってくる
ようにあいつに伝えとけ!』
『・・・・』
『・・・・あ?安岡・・なんか言ったか?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『・・・・・ん・・・・・』
『・・・・・どうしたの?』
『・・・・何か携帯が・・・・・』

そう言って黒沢はジーンズのポケットから携帯を取り出した。
ディスプレイには【新着メール】の文字。

『・・・・メール・・・?』
『そうみたい・・・・』
不思議そうに 携帯を覗き込んでくる透子を愛しく思いながら黒沢は慣れた手つきで
携帯を操作していく。


『黒ポンへ
1年ぶりの沖縄はどう?
さっきリーダーに頼み込んで2日間、黒ポンのことオフにしてもらったから
気兼ねなく楽しんできてね~★安岡&北山 P.S. お土産話、楽しみに待ってるね(笑)』


『・・・あいつ・・・・・』

仲間からの思いがけないメールに思わず笑みがこぼれる。

『・・・・どうかしたの?』

『いや・・・2日間オフになったから楽しんで来いって安岡の奴が・・・(笑)』

その言葉に彼女の顔が輝く。

『本当!?』

『うん。透子はどこか行きたいところとかある?』

透子を見つめながら そっと彼女の白く、小さな手を握る。

『・・・・薫と一緒だったらどこでもいい・・・・』

そう言って 柔らかく 微笑む彼女が  これ以上ない程に 愛しくて 恋しくて

『・・・・・透子・・・・・』

彼女の言葉に 愛しさがこみ上げる。
そして 胸に感じる  これ以上ない程の  喜びと  確かな幸せ。


『・・・・じゃあ・・・今日はずっと離さないから・・・・・・』
『・・・・・薫・・・・・・』

そっとその瞳を見つめながら  頬に触れる。






『・・・・・愛してるよ・・・・透子・・・・・・』

『・・・・・私も・・・愛してる・・・・・・・・。』

波の音を  感じながら  そっとその唇に口付けて

その身体を抱き寄せた。

気がつけば   沈んでゆく夕日の眩しい程の煌めきが 
2人を包んでいた。






『・・・・・もう・・・離さないから・・・・・。』


願いのような  誓いを そっと耳元で 囁くと

黒沢はもう一度、 透子の その唇に優しく口付けた・・・。







涙も 寂しさも その全てを  今 受け止めて

確かな絆を胸に この日々を生きていく

この季節の中で 生まれた 確かな想いをそっと胸に抱きながら

その微笑に 触れて

確かな 『今』を あなたとともに  生きてゆく・・・・・










Fin

・・・・・・・・・・・・・・・・

『From 安岡優

subject 緊急連絡


「黒ポン、ゴメン!さっき、オフになったから楽しんできてって言っといて悪いんだけど、
すぐ、こっちに戻ってきてくれないかな・・・?その、仕事の方はね、全然大丈夫なんだけど・・・そのなんていうか、俺が大丈夫じゃないっていうか・・・ぶっちゃけ言うと
リーダーが・・・そのヤバイっていうか(汗)・・・ご立腹・・・みたいな(苦笑)?今日、
酒井さん他の仕事で戻ってきてないし、頼れるの黒ポンだけなんだよね・・・・だから
あの・・・透子ちゃんとのせっかくの再会を引き裂くようで申し訳ないんだけど・・
とにかく至急戻ってきてくれないかな?・・・・・返事待ってるね・・・・・?安岡」


『From 北山陽一
Subject ゴメンね。

『ヤスからメール行ったと思うんだけど、・・・そういうことなんで戻ってきてくれないかな?・・・1年ぶりの再会に水を差すようで申し訳ないんだけど(苦笑)俺とヤスだけじゃ、もう駄目なんだよね、ハッキリ言って(笑)なんか、もう手がつけれないっていうか
・・・・そんな感じ(笑)?・・・・だから、その黒ポンさえ大丈夫なら戻ってきて
・くれると嬉しいです。・・・ゴメンね?なんか俺・・肝心な時に役立たずで(苦笑)
とりあえず、返事待ってます。北山』











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by yuna-sos-0305 | 2007-08-18 13:18 | 小説